問題解決できる社労士に/北九州中央社会保険労務士法人 代表 江口 勝彦
社労士業界に足を踏み入れ、早いもので二十数年。職業人生の大部分を社労士として過ごしている。この間、未曾有の長引く不況、労働者の権利意識の高まり、法律の改正など、取り巻く環境が激変するなかで追い風や向かい風が吹き、時には横殴りの突風も吹いたが、何とか吹き飛ばされずに今までやってきた。そこで、過去を振り返りつつ今後を展望してみたい。
開業当初は、入社から退社までの労働・社会保険の手続きには大きな手間が掛かっていた。その後、社労士事務所にて急速に業務ソフトの導入が進むばかりか、今では社労士の主な顧客である中小企業でも徐々にその導入が進んでいる。結果、電子申請手続きは進化を遂げ、社労士の日常的な手続き業務は今後、大幅な市場の縮小が予想されるといわれる。確かに、それが業界全体の共通認識であると思われ、私自身、共感するところである。
一方、社労士に対する期待が高まっていることも強く感じている。昨今では、働き方改革に伴う法改正など複雑な法律の仕組みを理解する必要があり、社内の人事担当者だけでそれらの問題を適切に処理するのは困難である。
とくに、規模の小さい企業ではその傾向は顕著だろう。企業ごとの状況を把握して適切に情報提供するほか、労使トラブル発生時には丁寧に相談に乗り、正しい選択肢を示して解決に導く「問題解決ができる社労士」が求められるのは間違いない。
今後、人事労務に関する法律や制度が変化し、複雑化していくのは論を俟たない。働き方改革に端を発した急激な変化への対応、また、労働力人口減少に伴い、いかに少ない労働力で多くの成果を上げるかという視点からも、その対策は画一的なものでは機能しない、そんな感がある。
だからこそ、我われ社労士が業界の未知の可能性を切り拓き、依頼者の負託に応えることができるよう研鑽を積む必要がある。労使トラブルを未然に防ぎ、また、仮に発生したとしても、「問題解決ができる社労士」であるならば、そこに依頼者のニーズがあり、この分野において、社労士の仕事がなくなることは絶対にないと断言できる。
最後に、制度創設50周年に当たり全国社会保険労務士会連合会が発した「『人を大切にする企業』づくりを支え、『人を大切にする社会』の実現に貢献する」とのメッセージを忘れることなく、法律で認められた唯一の労務管理の専門家として残りの社労士人生に邁進したいと気持ちを新たにしている。
北九州中央社会保険労務士法人 代表 江口 勝彦【福岡】
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