【主張】難しい感染拡大中の団交
中央労働委員会は、新型コロナウイルス感染拡大中の団交拒否事件について使用者の不当労働行為を認め、救済命令を発した(関連記事=コロナ理由の団交拒否認めず 対面で協議が原則 中労委)。政府が、三密を避けテレワークを要請しているなかで、団交だけは例外扱いしなければならないのか、難しい判断が必要になる。使用者は、時々の感染状況を考慮した団交のあり方を検討し、組合に提案する真摯な姿勢が必要といえそうだ。
中労委は、愛知県の生コン製造業である㈱小西生コンが、コロナ感染防止を考慮した団交回避判断を不当労働行為と認定した。令和2年5月当時といえば、政府が初の緊急事態宣言を発出し、その後も断続的に同宣言が続いた時期である。人と人との接触機会を7~8割削減することをめざした外出自粛が要請され、団交開催についても例外とはいえないはずである。
連日のマスコミ報道も影響し、未知の〝恐ろしい感染症〟が広まる過程だった。社長らを含めた労使が対面で団交を開催したことによってクラスターが発生し、場合によっては企業運営にダメージが生じる可能性も否定できない。使用者が経営上のリスクを配慮して、対面団交を回避したとしてもあながち不当とはいえないのではないか。
今後も再度のパンデミックや自然災害が発生し、団交開催にとって厳しい環境が生じることもあろう。労使双方が同席、相対峙して自己の意思を円滑かつ迅速に相手に直接伝達することによって、協議、交渉を行うことが原則であることは間違いないが、パンデミックの最中にも原則を通すべきかは判断が迷う。
しかし、使用者としては、対面による団交開催に対する努力を怠るべきではない。組合から感染対策を考慮した開催方法が提案されればこれを検討の対象とする。あるいは、使用者から完全な感染対策を施した団交開催の提案も考えられよう。リモート形式での団交も一考すべきである。
仮に紛争となった場合、使用者に団交開催に向けた合理性のある努力の跡が残っていれば、結果的に合意が整わず団交開催に至らなくても、不当労働行為とはならない可能性もある。