【ひのみやぐら】作業の定点観測がポイント
安全衛生パトロールは、大きく2種類に分けられる。一つは、意識啓発を目的としたパトロールだ。経営トップ層や全国安全週間などで行われる労働局長による現場巡視が、それに当たる。意識啓発型のパトロールでは現場の不備を確認する以上に、今後の全体的な安全衛生管理を向上させていくという狙いがある。トップは自らが広告塔になり範を示すことで、現場の作業員に労働災害防止を呼び掛ける。現場を見るというよりも「見せるパトロール」といってよい。
もう一つは、日ごろの安全衛生活動としてのパトロールがある。毎日の作業のなかで異常や不備がないか、安全衛生担当者や管理者、職場のリーダーがチェックする実務的なパトロールだ。今号特集Ⅰは、戸田建設首都圏土木本部が施工する城北中央公園調整池(一期)工事その2で取り組んでいる巡回時の「5分間立ち止まり活動」がテーマなので、日常の行う安全パトロールのポイントについて紹介したい。
まず、パトロール実施者は、清潔な服装、保護具、腕章を着用する必要がある。実施者は不備を確認するのが仕事なわけだから、その本人の服装が適切でなければ、現場で働く人たちに説得力がない。
現場での歩行は、必ず安全な通路を通り、作業員が通行してくる場合は優先させる。また、そばを通るときは「通ります」「お疲れ様です」「ご安全に」など声を掛ける。些細なことかもしれないが、声掛けは現場の良好な雰囲気づくりに欠かせない。仕事の邪魔にならない程度に、作業状況を聞き取るのもよいだろう。
パトロールは基本的に歩きながら行うが、「5分間立ち止まり活動」のように、一箇所に留まってじっくりと作業を観察したい。働いている人の動作や機械との関係を見ることで、これまで気が付かなかった危険や不安全行動が浮き彫りになる。現場の潜在的なリスクを発見するためにも、定点観測は絶好の手法といえる。
なお、パトロール時の要点は本誌平成30年8月1日号特集Ⅱ「安全衛生パトロールの上手な進め方、執筆・東内一明」に詳しい。電子版で検索のうえ、現場で役立てていただければ幸い。