【主張】ブラック大手は懲り懲り
愛知・大阪・京都の3労働局が㈱電通と支社の労働時間管理責任者を、労働基準法違反の疑いで地方検察庁に書類送検した。東京本社は、東京労働局がすでに平成28年12月の段階で書類送検しているが、今回、改めて法令違反の立証を補強するための証拠書類をそろえて追送した。大手企業による注目事案だけに、異例ともいえる執拗な捜査が進められたことが分かる。
他の大手企業はこれを他山の石とすべきである。電通事件から学ぶべき教訓は主に2つある。労働時間自己申告制の危うさと、所定労働時間終了後の研修や飲み会の労働時間性である。
自己申告制は、労働時間の把握が曖昧になりがちで、十分な管理態勢を整えておかないと、企業側の責任を追及される恐れが高い。実態通り自己申告しても不利益な取扱いがなされないことなどを労働者に十分説明する必要があるほか、定期的な実態調査も求められている。制度運用が長期間になると、実際の残業時間と自己申告時間がかい離して過少申告となりやすい。
労働基準法上、企業は労働時間管理を行う責務がある。自己申告制の不適切な運用による割増賃金の未払いや過重労働の発生が以前から問題化していた。残業時間を実態通り自己申告しないのは、「労働者自身の責任」という主張は通らないことを肝に銘じてもらいたい。
就業時間後の研修や飲み会の位置付けも明確化しておく必要がある。仮に飲み会であっても労働時間性が疑われるケースがある。電通では、新入社員が幹事となって取引先を交えた飲み会を定期的に開き、その後、朝方まで反省会を開いたという。
参加しないことによりその後の業務に支障が生じるなど業務との関連が強い場合、飲み会であっても純粋にプライベートといえるかである。まして、上司や先輩が出席を強要していれば、使用者の指揮命令下にあると判断されても致し方ない。
大手企業なら法令遵守は当然といえる時代は過ぎ去った。これ以上”ブラック大手企業”が排出されないよう切に望みたい。