【ひのみやぐら】高齢者の体力チェックを
労働災害件数を引き下げるためには、高齢者の対策が欠かせない。高齢者の労働災害は、身体能力の低下を原因とするものが主なので、まずは設備の改善が第一になる。ハード面から着手していくのが、高齢者対策の常套手段だが、人に着目した安全衛生確保も確実に進めていきたい。
人間は加齢とともに、筋力や認知機能など心身の活力が低下していく。若いころにはできた動きでも、年齢を重ねると次第に無理が生じてくる。たとえば、重い荷物を持つ、(作業では推奨できないが)階段を1段抜かして上る、といった行動も荷が持ち上がらなかったり、足をつまずかせたりしてしまうようになる。
身体能力の低下は人間である以上、仕方のないことだが、問題は本人の自覚の有無だ。誰もがいつまでも若く見られていたいし、体力維持のために生活習慣を工夫したり、努力をしている人もいる。また、精神的な変化を感じず、自分が歳をとったのを忘れることもある。さらに、あえて年齢に背を向けている人もいる。年齢を意識しないと、無自覚に若い時の自分を基準に行動しがちだ。高齢者の労働災害は、すでに動かなくなった体に気が付かないのが原因で起こるケースが少なくない。
高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)では、高齢者の健康や体力の状況把握を求めている。労働災害を未然に防ぐためにも重要な施策のひとつといえよう。特に体力チェックは継続的、定期的に実施することで、高齢者に気づきを促す。客観的に体力の把握をすることで、高評価が得られた高齢者にとっては、体力の維持向上や作業への意欲につながり、労働災害防止はもちろん、生産性にも大きく貢献していく。体力チェックで必要な水準に満たない高齢者がいたとしても、作業環境改善のヒントとなり、働きやすい職場づくりの実現につながることは間違いない。
以上のような理由から、自分の体を知ることが、労働災害を防ぐうえでは非常に重要になる。高齢者には身体能力低下によるリスクがあることを、教育できちんと指示しておきたい。