【主張】賃上げ環境の形成が必要
政府は「経済財政運営と改革の基本方針2022」を作成した。新しい資本主義に向けた重点分野として、「人への投資」を挙げ、働く人への分配を強化する賃上げを推進するなどとしている。カギとなるのは、適切な経済財政運営の実行である。大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略によって、いかに「成長と分配の好循環」を実現できるかに掛かっている。
同方針によると、「人への投資」を重要課題の1つに据え、賃上げとともに最低賃金の引上げを打ち出した。賃上げへ向けた支援策として、賃上げ促進税制の活用や、賃上げを行った企業からの優先的な政府調達など、中小企業も含めた賃上げを推進するなどとしている。最賃の目標としては、これまでどおり、できる限り早期に全国加重平均1000円以上をめざすとした。
問題は、中小・零細を含む多くの企業が大幅な賃上げを実施できる経済環境を形成できるかにかかっている。日本では、長期間、民間需要や投資がジリ貧状態にあるのが実情である。この結果、賃金は上がらず、国内総生産(GDP)の規模も停滞が続いている。数十年にわたりパイが拡大していない以上、所得が増加しないのは当然といえる。
同方針では、当面の経済財政運営として、大胆な金融政策、機動的な財政政策、および民間投資を喚起する成長戦略により、「成長と分配の好循環」を拡大していく必要があるとした。小手先の賃上げ支援策を否定するわけではないが、好循環の実現による経済全体の底上げがまずは優先すべき視点である。
令和5年度の予算編成方針では、景気の下振れリスクに対応し、民需中心の景気回復を着実に実現して、好循環に向けた動きを確かなものとしていくと明記した。基本的に、従来の考え方を踏襲しているが、未だ成果が上がっていない。
「新しい資本主義」の下、民需主導による景気回復を達成して、賃上げや最賃の引上げにつながる環境の醸成を強く期待したい。これ以上の経済の衰退は許容できない。