【主張】本社責任の明確化が必要
今年度末までを期間とする第13次労働災害防止計画の目標である「死傷災害5%以上減少」の達成は、まず困難な状況となっている。2021年の死傷者数は、確定値で15万人弱となり、前年比15%近く増加した。小売業など小規模事業場において、十分な災防対策が採られていないことが大きな要因と考えられる。法改正を含め、企業単位での安全衛生管理を強化する方向で検討を開始すべきではないか。
同計画では、17年の死傷者数約12万人と比較して、5年後の22年までに5%以上減少させる目標を掲げ、災防対策に力を入れてきたが、4年間で約3万人も増えている。目標を達成するには今年、約3・6万人、前年比で約24%減少させなければならない。
とくに増加が顕著なのは、小売業や介護施設などにおける「転倒」や「腰痛」といった「行動災害」によるもの。骨折や後遺症を伴う重大なケースが散見されるため、軽視できない。厚労省は「直ちに改善が必要な危機的状況」と通達している。
その発生メカニズムは労働者の個人的な要因による影響が大きく、製造業などで実施してきた従来型の方策では、十分な成果を挙げられないことが明白。このため、厚労省では、今年度から「従業員の幸せのためのSafeコンソーシアム」を新規に開始した。顧客やステークホルダー全員で安全管理体制強化を積極化していくとした。賛同企業、団体、個人で労働災害問題を協議。意識啓発と安全管理への機運醸成をリードするとともに、地域内企業に対する好事例の発信を活発化する取組みを進める。
しかし、長期間にわたって増加に歯止めが掛からない死傷災害の現状を考慮すると、意識啓発や機運醸成で十分な効果を期待することはできない。小売業など各地域に点在する小規模事業場を単位した災防対策には、限界があると考えざるを得ない。今後は企業単位による安全衛生管理の充実・強化を模索していくべきだろう。労働安全衛生法の見直しも視野に、第三次産業の本社の責任について明確にしていく必要がある。