やりがいある働き方改革/社会保険労務士法人EMagency(エマージェンシー) 三輪 全子
今から3年前の2019年、労務の現場では働き方改革が広まり、対応に追われる企業がめだった。その特徴を改正内容に合わせて振り返ってみる。
まずは、19年の年次有給休暇5日取得の義務化である。これは、労働者と使用者の双方にとって、年休という制度を強く意識するきっかけになった。
当時はどの企業も人手不足で、人材を集めることに苦戦していた。ヒトを集めるには、求人票の給与額だけでなく、ある程度の年間休日数を確保できているか、年休の取得がスムーズにできる職場環境か――などに気を配る必要があり、人材集めは、その企業の営業活動に匹敵する要素を含むものになってきていた。
新型コロナウイルスの感染拡大防止で、事業縮小を余儀なくされ、事業所を閉鎖した会社を担当したときのことである。大量離職ということで、行政の方にも協力をもらいながら退職手続きを進めたところ、解雇日までの間に、年休を5日取得させるように強く求められた。法律なので当然ではあるが、現場で必死に残務整理を行う労働者や使用者に対し、5日の取得義務を伝えることに、社労士でありながら少しだけ違和感を覚えた。
次に、20年の時間外労働の上限規制。年休をできるだけ消化したうえで残業時間も制限される環境のなかで、労働の成果は同じように出さないといけなくなった。
昇給・賞与支給を確実に行うためには、入社時点や前年に比べ、会社も労働者も成長していなければならない。限られた時間で働く意識を高めながら、業績を上げる難しさを感じている企業は多い。上限規制によって、副業・兼業を認めざるを得ない状況にもなってきており、諸問題が生じないよう一層の労務管理が必要になっている。
最後に、20~21年の同一労働同一賃金である。企業にとっては、正規労働者と非正規労働者の区別の仕方、これまでの給与、福利厚生の考え方を見直す良い機会になったのではないだろうか。私の顧問先では、見直しを積極的に行い、組織に必要な人材を集めるため、ホームページや求人票に明記するなど、募集に活かす企業が多い。
このように働き方改革は、労働者と使用者の意識改革を求めるものであり、一昨年からのコロナ禍も加わり、労務管理の大切さ、難しさを痛感する。ただ、社労士としてこんなにやりがいを感じる状況はこれまでになかった。今後も顧問先の事業所と一緒に悩み、取組みを続け、自分の事務所を含めて雇用を継続できる企業でありたいと思う。
社会保険労務士法人EMagency(エマージェンシー) 三輪 全子【鹿児島】
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