【ひのみやぐら】食品製造業の安全意識向上へ
食料品製造業の労働災害が後を絶たない。厚生労働省がまとめた令和3年労働災害発生状況確定値をみると、死亡災害は13人と前年と同数だったものの、死傷災害は8890人で前年の7958人を大幅に超えてしまった。製造業のなかでは最多で、次に多い金属製品製造業が4183人なので、飛び抜けているといっていいだろう。
本年2月11日に発生した三幸製菓荒川工場の火災災害はいまだ記憶に新しい。事故を受け新潟労働局では、新潟県米菓工業協同組合の組合員に対して緊急自主点検を要請したが、約7割の工場で不備が見つかり、安全管理が進んでいない実態が浮き彫りになった。
労働災害が多いのは、さまざまな理由がある。水や油を使って加熱調理することから、転倒や火傷のリスクが高いことや、包丁や刃のある機械を使用することから切創する危険がある。パートタイマー、アルバイト、派遣社員など非正規が多く、短期勤務者が少なくないので、教育で効果を上げることが難しい。高齢者や外国人も増えている。実際に死亡者が少ない業種ではあるので、大ケガをする危険な職場という認識が労働者に乏しいのも要因だ。
災害防止に特効薬はない。少なくとも労働者一人ひとりが意識を持って、食料品製造業は危険のリスクがある職場という認識のもと、日々の安全作業に努めたい。刃物を使うときは、切創防止手袋やエプロンなどの使用、床が水浸しでも滑りにくい靴の着用、食品加工用機械対策では危険部分のカバー設置や点検作業時には必ず機械を停止するなどの基本的対策を怠らないようトップが呼びかけていく必要がある。
また、労働安全衛生法施行令改正により令和5年4月1日から職長の安全衛生教育対象業種に食料品製造業も追加され、実施が義務となる。現場のキーマンである職長の能力を引き上げることは、職場全体の意識を高めることにつながる。本誌では、法改正の効果に大きく期待しているところだ。
食品産業にとって、労働災害は商品のイメージ悪化につながる。労働災害の撲滅は、経営戦略として捉えたい。