【主張】女性に求めたい意識改革
21世紀職業財団(岩田喜美枝会長)が、このほどまとめた「若手女性社員の育成とマネジメントに関する調査研究報告書」は、わが国において女性管理職の拡大が進まない本質的な要因を明確にした。「あなたは管理職になりたいか」との質問に「なりたい」と回答したのは、男性で約半数に上るが、女性は1割強に過ぎないことが分かった。
昨年の通常国会で成立、施行した女性活躍推進法では、女性に対する採用・昇進機会の積極的な提供、職業生活と家庭生活の両立促進に向けた対策の実施などを義務化した。女性の活躍をめざした社会や職場環境整備の重要性を否定するものではないが、女性の活躍が進展しない最大の要因は、女性自身の仕事に対する意識、意欲の相対的な低さにあるのは明らかだ。今後は、環境整備と並行して、女性の意識改革を目的とする施策をもっと積極化させるべきである。
もちろん、人の意識は取り巻く環境によって決定付けられる面はある。機会均等や両立支援などが整備されて、仕事に対する考え方が変わっていくことを期待したい。しかし、女性の意識改革に焦点を当てた対策が決定的に不足している。
ひと昔前まで、女性にとって仕事は一時的な「腰かけ」でしかないというのが社会一般の認識だった。「管理職になりたくない」という女性が多数派を占めるという現実と重ね合わせると、意識としてはこのころからあまり進歩していないといえそうだ。管理職への昇進をもともと放棄していれば、職業生活が充実したものとなるはずはない。自分の仕事は管理職手前までと考えているとしたら、昔の「腰かけ」意識とそれほど差はないだろう。
現政権は、2020年までに女性管理職を30%にまで引き上げたいとしている。スタート時点の女性管理職比率は10%であり、目標達成は困難との見方が大勢である。女性活躍推進などと周囲がかまびすしいわりには、多くの女性はこれを静観し、敷いたレールに乗ってこない。企業が、女性の管理職登用を躊躇する一つの背景であろう。