【主張】中小でも心の健康対策を
2018~22年度を対象とする第13次労働災害防止計画の終了まで7カ月余りになった。「17年比で5%減」を目標に掲げる死傷災害の大幅な増加が目を引くが、メンタルヘルス関連の取組みの低調さも軽視できない。
とくに労働者29人以下の中小・小規模事業者ではメンタルヘルス対策の実施事業所割合が低下するなど、前進がみられない状態だ。精神障害の労災認定の請求・支給決定件数が増加している現状を踏まえれば、規模の小さい企業であっても、メンタルヘルス対策の進展が求められる。
厚労省がまとめた「第13次防の主な目標に関する2021年実績」によると、メンタルヘルス関連3項目のうちの2項目が、17年時点と比べて停滞または後退している。
たとえば、メンタルヘルス対策の取組み事業所割合は、目標である「80%以上」に対して、21年は59.2%。17年時点からわずか0.8ポイント増に留まる。一方、仕事上の不安、悩み・ストレスに関する職場における相談先(事業場外資源を含む)についての項目は後退した。相談先がある労働者割合を90%以上にするという目標に対して21年は70.3%で、17年時点の72.5%を下回っている。
ストレスチェックの実施や相談体制整備などのメンタルヘルス対策の実施率は、規模間の差が広がっている。50人以上規模は17年の88.3%から94.4%に伸びたが、10~29人規模は50.2%から49.6%に減少した。
取り組んでいる内容は、規模を問わずストレスチェックの実施が最も多いが、やはり規模間差が大きい。実施が義務付けられている50人以上では95.6%に達するのに対し、10~29人規模は53.7%に留まっている。
対策に取り組まない理由をみると、規模が小さくなるにつれ、必要性を感じていない事業所が多くなる。しかし、人的資源が豊富でない中小企業ほど、メンタルヘルス不調によって労働者が長期離脱した場合の影響は大きい。中小企業のトップには、対策の実施が経営面でプラスになると認識し、着実に取組みを進めてもらいたい。