良き相談相手として研鑽/ADR社会保険労務士法人 代表社員 上田 篤史
平成6年7月に開業し、今から2年後の令和6年には早くも30年を迎えようとしている。開業当初は社会保険労務士と自己紹介しても何をする人ぞ、との反応ばかりだったのをよく覚えている。
労働社会保険の手続代行をやりますと伝えても、商工会議所(の事務組合)でやってもらっている、税理士事務所にやってもらっていると取り付く島もないことが多々あった。
今となれば笑い話だが、「社会保険労務士です」と訪ねた事業所で、「もう(生命)保険は入っているので要らん」と言われたこともあった。
そのような経験をしながらも、給与計算業務を兼ねることによって少しずつ顧問先が増えていったように記憶している。
また、人に関するさまざまな相談に応えられるよう関連知識のブラッシュアップのために産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、衛生管理者、FP技能士などの資格も取得してみた。
そうこうしながら約30年。社労士を取り巻く世界も随分と変化してきた。労働社会保険の手続きは電子申請で行い、給与計算もクラウドソフトを使って顧問先で行ってもらっているところも増えてきた。
助成金にも注目が集まり、コロナ禍による雇用調整助成金など雇用に関する助成金手続きの相談も増えてきている。
とくに個別労働関係紛争に関するADR代理ができる特定社会保険労務士制度が誕生したことは大きいと思う。
電子申請や給与計算業務はスタッフに任せ、私は主に就業規則やトラブルを含めた労務管理関連の相談、研修の講師などを担当している。特定社労士としてのADR代理業務はそれほど多くないにしても、日々さまざまな労務管理や労働に関するトラブルの相談を受けるようになった。
最近では、いわゆるパワハラ防止法への対応としてハラスメント防止研修やコミュニケーション研修を行ったり、精神障害関連の労災申請の相談を受けたりすることも多くなってきた。
ADR代理は万が一トラブルが起こった時の解決方法の一つではあるが、大切なのはトラブルを起こさない日々の体制作りだと感じている。
社労士とは何をする人ぞ。今でも社労士の基本は労働社会保険の手続きだろう。ただそれだけではなく、働くことにまつわる事項の良き相談者である。
30年を迎えるに当たり、それを全うするために、これからも研鑽しなければならないと考えている。
ADR社会保険労務士法人 代表社員 上田 篤史【京都】
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