努力できる人材の育成を/安藤社会保険労務士事務所 代表 安藤 政明
社会保険労務士事務所を開業してから25年目に入った。初心忘るべからずというが、かなり忘れてしまった。
開業当初の25年前を振り返ると、バブル崩壊後の「失われた10年」にもう少しという頃で、決して良い状態ではなかった。それでも、まだ「世界第二の経済大国」だったし、現在のように「安い日本」といわれることもなかった。
それが、30年間も給与が変わらないことになるなど、当時は予想もできなかった。今でさえ、30年間賃金が上がっていないという話は、少しピンとこない。
たとえば、開業当時は月給12万円という求人もいたって普通だった。
当時の福岡県最低賃金は617円で、月給が11万円でも最低賃金をクリアできたのである。当時の12万円は、現在の感覚で18万円くらいだろうか。25年で1.5倍。求人募集の賃金は、世界レベルに匹敵する水準で上がっている。
30年間賃金が上がっていないといわれる原因は、「高給取り」の給与が上がっていないこと、非正規や高齢者が占める割合が増えたこと、昇給が小さくなったことなどである。こちらはピンとくる。
あまり語られない視点として、サービス残業の評価がある。
残業代の支払いがある程度当たり前になってから、まだ10年くらいだろう。30年間賃金は変わらないが、実態としての労働時間数は減少した。
労働時間が減少した分、時間単価が上昇したわけだが、これはサービス残業だからみえない。正確な統計はないだろうが、多分そういうことだろう。
労働時間の減少は、職業能力アップのスピードを鈍らせる。自ら少しでも他人より努力する者にとっては、突出するチャンスである。どんどん突出して、日本を引っ張る人材に次々出てきて欲しい。
努力しない者でも、赤字社員であっても労働法が守ってくれるから安心である。
このような者がたくさんいるから、日本は発展しない。これこそ賃金が上がらない最大の理由である。
今後も賃金は、引き続き「採用時は高いが昇給は小さい」が基本になるだろう。
賃金を上げるためには、それ相応の努力が必要である。ただし、「無駄な努力」や「報われない努力」ではダメ。方向性を見極めて努力することが望まれる。そしてこのような人たちを育て、幸せにする経営者が増えることを心から願う。
安藤社会保険労務士事務所 代表 安藤 政明【福岡】
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