【ひのみやぐら】ソフト面はじっくりと検討を
2020年4月1日第2351号のひのみやぐらで、「高齢者対策はハード面から」とみだしをつけ、まずもって最優先に着手すべきは設備などの改善と提言した。意見に変更はないが、ソフト面の軽視と誤解を生む表現のように感じたので、改めて付記しておきたい。
基本的に高年齢労働者の安全対策では、ハード・ソフト両面での対策を行うべきだろう。問題点がはっきりとして手がつけやすく、効果が現れやすいのがハード面の対策なので、優先順位を先に指示したというわけだ。ソフト面については、エイジフレンドリーガイドラインをみると、勤務形態や勤務時間の工夫、高齢者の特性を踏まえた作業スピード、無理のない姿勢とならないようマニュアルの策定、改定などを実施すべきとしている。
例えば、勤務時間には工夫が必要とある。ひとつの案として提示すると、きっちりと決められた休憩時間だけではなく、疲れを感じたら、休めるようにする。ほんの数分でも、背を伸ばしたり、深呼吸で気持ちを落ち着かせる時間をつくりたい。正式な休憩時間というよりも、現場の管理者の判断でできるようにするとよいだろう。
また、特定の作業を長時間行わせるのは避けるようにしたい。緊張と注意力は長く続かない。可能であれば、いろいろな作業を組み合わせるとよいのではないか。
以上のように高齢者の安全衛生対策を図るには、作業上の工夫が重要となるが、実現するためには若年者や壮年者との役割分担や協力、理解が必要となる。職場で十分な話し合いも、必要になるかもしれない。コンベヤーでの流れ作業でいえば、高齢者だけ作業を外して休憩させるのは困難だ。職場の納得を得るところに対策の難しさがある。
ソフト面の高齢者対策が難しいのは、個人差が激しいということが要因に挙げられる。本人に合うスピード感覚で仕事ができればよいのだが、制度として運用するとなるとやはり簡単ではない。
高齢者対策はハード面の対策を優先して、ソフト面はじっくりと検討を重ねたうえで取り組むのが得策ではないか。