【主張】人権DDの影響どこまで
サプライチェーン全体で人権侵害の排除を徹底する人権デュー・ディリジェンス(人権DD)への対応に向け、さまざまな団体でガイドライン類の策定・展開が進んでいる。グローバル展開する大企業はもちろん、国内の関係先・取引先にとっても、知らぬ存ぜぬでは済まない状況が近付いているのかもしれない。
技能実習生問題で国外から厳しい目を向けられてきた繊維業界では、すでに人権問題が無視できないリスクとなっている。昨年、中国・新疆ウイグル自治区産の綿を巡り、大手メーカーが米国で輸入差止め措置を受けたことは、記憶に新しい。
業界の28団体で構成する日本繊維産業連盟は、7月末に「繊維産業の責任ある企業行動ガイドライン」を策定し、9月に入ってホームページで確定版を公表した(=関連記事)。ILO駐日事務所の協力を得て、下請企業にとっても行動規範となる内容をめざしてまとめられている。そこに発注者のみが人権DDを行えば良いとの発想はなく、“初心者”の活用を想定し、自社の労務管理の適正さを点検できるチェックリストも用意した。問題を発見し改善する観点から、「労働者代表/労働組合との協議を含め、共同でチェックすること」を推奨している。
金属産業の産業別労働組合で構成する金属労協では、特別なステークホルダーとして労組も運用プロセスに参画すべきとし、独自に「対応ポイント」をまとめた(本号5面参照)。人権DDはすべての企業に求められるものとし、労組が積極的にかかわるべき分野を示したうえ、企業側に苦情処理・救済システムの設置を促すよう求めている。
人権DDについては近年、欧州を中心に法制化、企業への義務化の動きが進み、国内でも経済産業省がガイドライン案をまとめ、8月末までパブリックコメントを募っていた。金属労協と構成産別はこれに対し、明示的に労働組合の参画を求めるべき――などをはじめとした意見を提出している。経産省では正式なリリースの時期は未定としているが、今後、労使にどれほどの影響を与えるものになるのか、注視せざるを得ない。