【主張】過半数代表の適正化必要
京都府の企業が、過半数労働者代表の選出方法が不適切として、京都地裁により多額の不払い残業代の是正支払いを命じられた(本紙5月22日号5面既報)。原告労働者が、裁量労働制の対象者といえるかが問題となる以前に、その裁量労働制自体の有効性が否定されてしまった。
日本では、労使自治の拡大、労働組合組織率の低下などから、近年、過半数労働者代表の役割が拡大し、重要性が高まっている。締結された労使協定は、強行法規である労働基準法の一部効力を免責したり、規制を緩和する重大な効力を有し、なおさら慎重さが求められる。
政府の働き方改革では、大きな課題になっていないが、公正な労働条件の形成に向けたチェック機能の強化という側面から考えても、もっと強力に監督指導し、必要ならば制度改正も視野に置くべきであろう。
企業としては、適切な手続きを経ない過半数労働者代表を当事者とする労使協定は、そもそも免罰的効果や規制緩和効果が認められない可能性があることを再認識し、自社がとった手続きを点検してもらいたい。
本来、過半数労働者代表は、どのような協定で活用するかを明確にしたうえで、投票や挙手により選出する必要がある。民主的手続きにより選出されたことが明確なら労働者同士の話合いや持回り決議などを通じた選出でも構わない。
不払い残業代の是正命令を受けた京都府の企業では、労働者の多くが、過半数労働者代表選出に当たり会合や選挙が行われた記憶がないと証言しており、選出方法が全く不明だった。さすがに近年では、総務課長などの職制を過半数労働者代表としている企業はないと思われるが、管理職も参加する親睦会組織の代表をそのまま横滑りさせているケースが散見される。
労組活動が盛んな時代は、労組代表が選出されていたが、いまや労組自体が存在しない企業が多数を占めている。このような時代において、労働者の利益を代弁する過半数労働者代表のあり方が問われている。