ハラスメント防止へ/社会保険労務士法人はなみずき グループ統括執行役員 森 孝寛
2017年1月に社労士として登録し、個人事務所として開業してから5年が経過した。さまざまな縁に恵まれ、6年目の今年からは2人のパートナーとともに、社労士法人および経営支援会社を運営していくこととなった(現在は社労士3人、スタッフ3人の計6人体制)。そんな私が社労士になる最大の契機こそが、前職におけるハラスメント被害の経験である。
ハラスメントといえば、改正労働施策総合推進法が今年4月から中小企業にも施行され、セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントなどと同じく、パワーハラスメントについても事業所の措置義務への対応が問われている。そして、各法令が事業所に求めているのは問題の防止のみならず、その後の適切な対応・再発防止であるのはいうまでもない。
しかし、“ハラスメントの防止”は、一体どこからスタートすれば良いのだろうか。私が考えるスタートラインは「職場全体の正しい理解」である。この理解は、就業規則や防止ポスターによる周知だけで成し得るものではない。時間を取り、繰り返し伝えることが肝要だ。法令上における各ハラスメントの概念・定義から始まり、該当しやすい例・該当しにくい例を挙げて説明し、理解を求める。パワハラについては、適切な指示・指導の場合は該当しない可能性が高い旨も伝える。
私が研修などで説明する際にとくに訴え掛ける点が3つある。
1つ目は、「他人事にしないこと」。私自身の被害経験も例に挙げ、自身のどんな言動が他者を傷つける可能性があるかを参加者に考えてもらう。傷付けてしまったときのフォローの大切さも伝える。
2つ目は、「あらゆる者が加害者にも被害者にもなり得ること」。労働法の特性上、保護の対象は労働者が主体だが、経営者も労働者も同じ人間であるからこそ、この視点は欠かせない。
3つ目は、「“〇〇ハラ”という言葉は武器になり得ること」。近年、メディアあるいはSNSを発信源として新たな“〇〇ハラ”が生まれ続けている。おそらくは社会に潜在的にあった諸問題が、ハラスメントという言葉の衣を借りて、顕在化しているのだろう。一方で、〇〇ハラという言葉が、他者を攻撃する武器として用いられる危うさも感じられる。
人間がコミュニティを形成するなかで、他者を傷付けることはやむを得ないのかもしれない。しかし、せめて社労士としての立場から、職場のハラスメント防止に尽力していきたいと切に思う。
社会保険労務士法人はなみずき グループ統括執行役員 森 孝寛【愛媛】
【webサイトはこちら】
https://hanamizuki.or.jp/