【助成金の解説】働き方改革推進支援助成金・業務改善助成金/岡 佳伸
助成金の活用
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、働き方改革に取り組む中小企業事業主に、環境整備に必要な費用の一部を国が助成する制度です。4つのコースに分かれています。
・働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主が対象・
・働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」=「勤務間インターバル」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図る「勤務間インターバル制度」の導入に取り組む中小企業事業主を支援。
・働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)
賃金台帳等の労務管理書類の保存期間を5年に規定にするとともに、生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主。
・働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
中小企業事業主の団体や、その連合団体が、その傘下の事業主のうち、労働者を雇用する事業主の労働者の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取組を実施した場合に、その事業主団体等に対して助成。
上記のいずれものコースも交付申請時点で選択した「成果目標」達成のため取り組みを実施していること、個別の企業を支援するコースでは年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していることの要件があります。
この助成金では「労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新」も助成対象となる取り組みです。
今現在紙で勤怠集計をしている中小企業はこれを機に、勤怠管理や給与計算等のシステム導入を検討するのも良いと思います。勤怠管理システムでは労働時間が一定を超えるとアラートを通知させるものもありますし、60時間超の時間外労働も判定してくれます。
業務改善助成金
業務改善助成金は、一つの事業場の規模100人以下の中小企業事業主が、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。生産性向上のための設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。生産性向上に資する幅広い取組が助成されます。
助成金申請のポイント
ポイントは次の3つが挙げられます。
(1)交付申請期限の遵守
(2)取り組んだ実績を必ず記録する
(3)事業実施後の申請を忘れない
順に詳しく解説します。
交付申請期限
働き方改革推進支援助成金の令和4年度の交付申請書の締切は11月30日(水)とされていますが、国の予算額に制約されるため、11月30日以前に予告なく受付を締め切る場合があります。早めの提出を心がけるのが良いでしょう。また、原則、交付申請時に必要経費の相見積もりの提出が必要になります。
取り組んだ実績の記録
働き方改革推進支援助成金では労働時間等設定改善委員会の議事録等や取組内容の周知に関して提出が必要になります。
事業実施後の申請を忘れない
助成金では事前の交付申請、交付決定通知の受領、実績報告の流れが必要になります。交付決定のみでは助成金は支給されませんので、必ず実績報告を行う必要があります。
令和5年度の新設助成金
来年度は働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)が新設されます。2024年3月末まで36協定の特別条項上限規制適用が猶予されている業種(建設事業、自動車運転の業務、医師、鹿児島県と沖縄県の砂糖製造業)への支援を目的としています。
・36協定上限の見直し
・勤務間インターバルの導入
などの成果目標を達成するために、
① 労務管理担当者に対する研修
② 労働者に対する研修、周知・啓発
③ 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取組
⑥ 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
⑦ 労務管理用機器の導入・更新
⑧ デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
⑨ 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
を行った場合に助成されます。
まとめ
多くの中小企業では就業規則等の改正が必要になります。令和4年度に改正施行された育児介護休業法やパワーハラスメント防止措置、キャリアアップ助成金を活用する際の正社員化定義の厳格化も含めて最新の法令に自社の就業規則が適合しているか確認しましょう。
筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)
大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント
【webサイトはこちら】
https://oka-sr.jp