【ひのみやぐら】職場一丸で本質安全化を
機械設備による災害が後を絶たない。事故の型でいえば「挟まれ・巻き込まれ」「激突され」「切れ・こすれ」が当たるだろう。この3つだけでも令和3年の死亡災害人数の2割以上に及ぶ。
「挟まれ・巻き込まれ」は機械の回転部に手指が触れる、衣服や布類の一部が巻き込まれることによって身体が引き寄せられるなど機械に接触したために起こる。「激突され」についてもクレーンや荷役運搬機またはその機械でつっていたつり荷、積み荷などが身体にぶつかることで発生する。
生産現場は、機械なしでは仕事にならない。労働災害に遭わないようにするためには機械と接触を避けるのがよい方法といえるが、現実的には難しい問題だ。たとえ産業用ロボットで自動化が図られていたとしても、設備設置時や点検などで接触の機会を免れることはできない。
また、災害発生のメカニズムとして「機械設備の不安全な状態」と「作業者の不安全行動」が絡み合って起きるとされている。たとえば、機械設備の機能に欠陥があっても、不備を知りつつ使用してしまったり、安全装置があってもオフの状態で稼働させてしまうケースが当たるだろう。
つまり、トラブルや異常が起きても暴走して災害とならない、作業員が操作ミスをしても自動的に止まるといったフェイルセーフやフールプルーフの視点が機械設備には重要となる。機械設置時などの事前審査やリスクアセスメントなどにより、本質安全化に向けた取組みが求められるというわけだ。機械設備の本質安全化には、コスト、技術、安全衛生の知識・経験が必要になる。このため、経営トップの理解、メーカーの協力は欠かすことができず、職場の安全に携わるすべての人が高い意識を持つ必要がある。
今号「事故防止 人の問題を考える」で著者の高木元也さんは「建設機械は、突然凶器に変わり、作業員に襲いかかります」と表現しているが、機械設備にも同じことがいえる。事前のリスクアセスメントで安全を確保し、日常的な点検や整備を行うことで丁寧に扱えば、機械も急に襲いかかることはないだろう。