【主張】生産性向上策の浸透カギ
政府はこのほど決定した「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」で、賃上げ、労働移動の円滑化、人への投資の3つの課題の一体的改革を進めていく方針を打ち出した。
中堅・中小企業・小規模事業者を対象に、事業再構築・生産性向上と一体的に実施する賃金引上げへの支援を大幅に拡充するという。賃上げが可能になる生産性向上を実現するためには、各事業主の課題に応じた具体的な生産性向上策の提示が求められよう。
総合経済対策では賃上げ促進施策として、業務改善助成金の拡充や、働き方改革推進支援助成金における「賃上げ加算」の増額を盛り込んだ。両助成金の拡充については、厚労省が策定した雇用・労働政策総合パッケージにも盛り込まれている。
業務改善助成金は、生産性向上のために設備投資を行い、事業場内で最も低い賃金を引き上げた事業主に支給するもの。今年9月にはすでに、原材料費の高騰によって利益が大きく減少している事業主や、事業場内最低賃金が低い事業主を対象とした拡充を実施している。今後、中小企業が利用しやすくなるようさらなる拡充を講じるという。
働き方改革推進支援助成金は、労働能率の増進につながる設備の導入などによって生産性を向上させ、労働時間の縮減・年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む企業を対象とする。時間外労働の削減などと併せて3%以上賃金を引き上げた場合、助成額を加算している。
どちらの助成金の活用を促すにしても、企業自身が取り組むべき生産性向上施策を具体的にイメージできなければ、賃金引上げに向けた取組みは進まない。
総合経済対策では両助成金の拡充に加え、賃金引上げの各種支援策および好事例の周知広報も強化するとした。労働基準監督署による企業への賃上げ要請・支援に取り組む方針も示している。
それらの取組みのなかで、中小企業が生産性向上施策を確実に行えるよう、業種・業態や企業が抱える課題に応じた最新の生産性向上事例を示してほしい。