年金制度の抜本改正を/ブレイン社会保険労務士法人 北村 庄吾

2022.11.20 【社労士プラザ】
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ブレイン社会保険労務士法人 北村 庄吾 氏

 平成16年改正で導入されたマクロ経済スライド制は、年金の価値を引き下げていく「悪魔の制度」にも近い。マクロ経済スライドに関して、厚生労働省が、基礎年金の削減を抑制するという方向性で検討に入るということが最近報じられた。マクロ経済スライドを続けていくと、現在価値で月額約6万5000円(満額受給のケース)の老齢基礎年金が、約2割も低い月額5万円を下回る価値に落ち込むという試算となった。これでは自営業世帯は生活が困窮するため、さらなる見直しを行う予定ということらしい。

 100年安心をうたった年金制度改革は一体何だったのか。本来、マクロ経済スライドの終了時期は、2023年が予定されていた。しかし、マクロ経済スライドは過去3回しか発動されず、2019年の試算によると、終了時期は厚生年金で2025年度、基礎年金はそれよりも22年長い2047年度という結果になっている。

 今の年金制度は、現役世代の保険料で引退世代の年金を賄うという「世代間扶養」の仕組みを採っている。少子高齢化が進展するなかで、2050年には現役1.2人に対して引退世代1人の割合となる。この仕組み自体が成り立たないことは、小学生でも分かる話である。仕組みを変えることなく、小手先で延命措置ともとれる改正を繰り返すことはもうやめた方が良いのではないか。

 マクロ経済スライドだけでなく、現行の年金制度は、若い世代のライフスタイルにも合わない。たとえば、配偶者加給年金額は一般的に年下の奥様がいる家庭では加算されるが年上の奥様は対象とならないことは典型例である。

 財政検証は5年ごとに実施され、次回は2024年の年金改正になるが、国民年金の被保険者期間を45年とする案や、厚生年金の被保険者期間を75歳までにする案、厚生年金対象者の適用拡大と第3号被保険者の見直しなどが示されている。

 年金制度は、働き出してから保険料を支払い、引退後に年金を受け取るという50年を超す長期にわたる仕組みである。その途中で大幅に制度を変更しては信頼が保てなくなるのではないのかと、大変危惧している。

 不況下で始まった低金利政策により、一部の会社は救われたかもしれないが、退職金(厚生年金基金や適格退職年金等)の資金準備制度は崩壊した。一昔前の人は、銀行や郵便局に100万円のお金を預ければ10年以内に200万円になっていた。

 働いた結果として老後を楽しむ時代は終わったのか――。年金制度の抜本改正を強く望む。

ブレイン社会保険労務士法人 北村 庄吾【東京】

【webサイトはこちら】
http://www.brainsr.com/

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令和4年11月21日第3377号10面 掲載
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