【主張】「同一賃金」へ指導強まる
企業における同一労働同一賃金の遵守を徹底するため、厚生労働省が新たな取組みを開始する(本紙12月5日付1面参照)。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差の解消に向け、都道府県労働局の雇用環境・均等部門が実施している報告徴収(雇用管理の実態把握)の前に、労働基準監督署がパート・有期労働者の有無など事実関係の確認を行うという。
不合理な待遇差の禁止などを定めたパート・有期雇用労働法の違反の有無を労基署が判断することはないものの、労働基準監督官が事実関係の確認に乗り出してくることは、企業にとってインパクトが大きいだろう。
新たな取組みは、監督官が労働条件に関する定期監督などを実施する際、パート・有期雇用労働者の有無のほか、基本給や手当、賞与などの待遇差の有無を確認していくというもの。確認した情報は、都道府県労働局長による助言・指導につながりかねない報告徴収の対象企業を選定する際に活かされるもようだ。
報告徴収の対象企業の選定については従来、労働局の雇用環境・均等部門が労働者からの相談などを踏まえて行ってきた。厚労省は、労基署による事前確認の導入によって、同法に基づく是正指導の実効性の強化を狙う。「違反している恐れがある企業をある程度あぶり出してから報告徴収を行えるため、違反率は高まるのでは」(厚労省有期・短時間労働課)とみている。
これまでは、全国47カ所の都道府県労働局が不合理な待遇差に関する実態把握を行っていたが、その前段階として、全国に325カ所ある労基署(支署含む)が事実関係を確認することになる。そのため、企業からみれば、行政機関から賃金などの待遇差を確認される機会が大幅に増えるだろう。
労基署による確認自体は同法違反の有無を判断するものではないが、待遇差の存在を軽視していると、労働局による報告徴収の対象となり、是正指導を受けかねない。企業においては労働局から指導される前に、同一労働同一賃金ガイドラインなどを参考に対策を講じておきたい。