【主張】不穏な“顧客扱い”規制を
フードデリバリーサービス「ウーバーイーツ」の配達パートナーで組織する労働組合の申立てに対し、東京都労働委員会はウーバー・イーツ・ジャパンら2社へ団体交渉に応じるよう命じた(本紙12月12日号3面)。ウーバー側は、配達パートナーの労働力を利用していない、業務委託や請負とは根本的に異なるなどと主張したが、都労委は労働組合法上の労働者に当たると認めている。
ウーバーイーツ事業において、運営者である同社は個々の配達に関する契約の当事者とされていない。発注するのはあくまで飲食店で、配達パートナーは彼らと契約を結ぶ。同社は双方をマッチングする一方、料理の注文者から代金と配送料を受領し、双方へ利用手数料を差し引いて支払う。配達パートナーと同社の関係は、サービスの利用者・提供者とされている。
都労委はこれに対し、労使関係法研究会報告書(平成27年3月)が示す基準に基づき、基本的判断要素(①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性)をすべて満たすと判断した。①については、配達業務の99%以上を配達パートナーが担い、アプリを週40時間以上稼働している者が2000人程度いる点などから、事業遂行に不可欠な労働力として確保されていたと認定。②と③に関しても、アプリが個別に配達料を交渉できる仕様になっていない、取引相手の飲食店が配送料の徴収・支払いに関与せず、実質的に同社が配送料の額を決定していたなどと指摘した。
すでに本業を持つ労働者にとって、アプリを通じたサービスは「好きなときに働く」ことを可能にする。ただ、同社が令和元年に実施したアンケートによれば、配達パートナーの約1割が週40時間以上働いていた。他方で15時間未満の者は6割近くに及んでおり、“フルタイム従事者”の高い貢献度が窺い知れる。
固定的な報酬を実現し、料金体系は事後通知のみで改定していたとまで聞くと、事業者目線からも穏やかではいられない。健全な労働力市場を維持するためにも、新法での規制が待たれよう。