【本棚を探索 書評家・三宅 香帆選集(2022年下半期)】『やりなおし世界文学』『そして誰もゆとらなくなった』『この夜を越えて』ほか
労働新聞で好評連載中の書評欄『本棚を探索』から、2022年の下半期に公開した三宅香帆さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。
『やりなおし世界文学』津村 記久子 著
世界文学、という大仰な名称に対して、描かれているものは意外とちっぽけだったりする。だって小説なんて、しょせんは人間同士の営みを丁寧に掬い上げたものなのだ。
『そして誰もゆとらなくなった』朝井リョウ 著
エッセイとは何か。それはサービス精神である。と、言い切りたくなるほどに、優れたエッセイ本を読むと、作者の大いなるサービス精神に感銘を受ける。
『この夜を越えて』イルムガルト・コイン 著
小説を読んでいると、まったく別の時代、別の国の物語なのに、なぜか現代のいま自分がいる場所と重なることがある。ふいに、「あれ、これは本当に他の時代の物語なのだろうか?」と不思議に思う瞬間があるのだ。
『鶴見俊輔の言葉と倫理』谷川 嘉浩 著
あなたは鶴見俊輔の名前を知っているだろうか。知っているとすれば、どの文脈で、だろう。戦後日本を代表する思想家。安保闘争での活動家。
『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』山本文緒 著
日記文学の系譜、というものが日本には存在する。古くは『紫式部日記』や『讃岐典侍日記』、『更級日記』、あるいは『枕草子』も一部そのひとつに入るのかもしれない。
『樋口一葉赤貧日記』伊藤 氏貴 著
5000円札の顔になった女性作家こと、樋口一葉。彼女の素顔を覗いてみると、まさかこの人がお札の顔になるなんて想像もできないくらい、貧しい生活を送っていた。
2022年上半期のまとめは、こちらから。
https://www.rodo.co.jp/column/135732/
選者:書評家 三宅 香帆(みやけ かほ)
会社員としても勤務中。近著に『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)。