【本棚を探索 書評家・大矢 博子選集(2022年下半期)】『小さき王たち 第一部 濁流』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『球界消滅』ほか
労働新聞で好評連載中の書評欄『本棚を探索』から、2022年の下半期に公開した大矢博子さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。
『小さき王たち 第一部 濁流』堂場 瞬一 著
参議院選挙が終わり、当日の夜は各テレビ局が一斉に開票特番を放送した。だが、特番での当選議員の言葉を聞いて、「これを選挙前に知りたかった」と思うことは少なくない。
『紙の梟 ハーシュソサエティ』貫井 徳郎 著
数年前から、現実とは異なる特殊な舞台設定のミステリーが人気を博している。ゾンビや透明人間が存在する世界だったり、タイムリープが繰り返される中での事件だったり、死者が生き返ったり転生したりする設定だったり。
『球界消滅』本城 雅人 著
プロ野球のペナントレースも大詰めである。この号が出る頃にはもう、セ・パともに優勝チームが決まっているだろうか。――と書いたものの、実は何の感慨もない。
『我、鉄路を拓かん』梶 よう子 著
今月14日は日本に鉄道が開業して150年の記念日だった。それに合わせてテレビや雑誌でも多くの特集が組まれたため、明治5年に新橋―横浜間で鉄道が運行を始めたときには、芝から品川にかけては海の上に築かれた堤防の上を走っていたことをご存知の人も多いだろう。
『火天の城』山本 兼一 著
今月6日に岐阜市で開催された「ぎふ信長まつり」は、織田信長に扮した木村拓哉さんが登場したことで大きな話題となった。東海地方、とくに尾張と美濃では信長人気はとても高い。
『秋麗 東京湾臨海署安積班』今野 敏 著
警察庁のキャリア官僚が主人公の『隠蔽捜査』シリーズが快調な今野敏。その今野にはもうひとつ警察小説の看板シリーズがある。それが1888年から34年にわたって続く『安積班』シリーズだ。
2022年上半期のまとめは、こちらから。
https://www.rodo.co.jp/column/135731/
選者:書評家 大矢 博子(おおや ひろこ)
88年、民間気象会社に入社。96年に退職後、書評家に。著書に『歴史・時代小説 縦横無尽の読みくらべガイド』(文春文庫)など。