【ひのみやぐら】物流業界をホワイトな職場に
わが国の物流を担う運送業界だが、働く環境は快適といい難い。特にトラック運転者不足は極めて深刻だ。コロナ禍やネット販売などで需要が高まっているにもかかわらず、運転者がいないことで物が運べないという状況もみられるようになったという。運転者のなり手が少なくなる一方で、高齢化が着々と進んでおり、労働環境の改善は「待ったなし」の状態となっている。
こうした状況のなか、国土交通省などが進めているのが「ホワイト物流推進運動」だ。国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済に寄与することを目的に「トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化」「女性や60歳以上の運転者なども働きやすい『ホワイト』な労働環境の実現」に取り組む。物流の改善に向けては、荷主企業・物流事業者などの関係者が連携して相互に改善を提案し、協力することが重要としている。
トラック運転者の労働条件、労働環境は決してよいとはいえない。労働時間は全産業より約2割長いとされ、年間賃金も1~2割低い。長時間労働の要因の一つとして挙げられるのが「荷物待ち」だ。納品先に車両が集中することで、結果的にむだな待ち時間が生じる。
また、大量の荷物の積み込み、積み下ろしは運転者にとって重労働。長時間労働の原因であるとともに、荷台から墜落するなど労働災害も少なくない。
状況を打開するために、国交省では積極的に運動の賛同企業を募っている。運動ではまず、「改善への取組方針」「法令順守への配慮」「契約内容の明確化・順守」の3項目を必須とする「自主行動宣言」に合意する。さらに「混雑時を避けた配送」や「運転以外の作業部分の分離」など自社で取り組む項目を選ぶ。提出用フォームに実施すべき事項を書き込み、事務局に提出するというもの。社内で合意を得やすいものから、段階的に行い、内容を充実させていくとしている。
ネット販売が全盛を迎えているが、下支えをしているのは物流業界。多くの人が便利さの恩恵に与っているなか、社会問題として考える必要がある。