【主張】転嫁図り継続的賃上げを
消費者物価の伸びが止まらない。最新の昨年11月の総合指数は前年同月比で3.8%増に高まり、生鮮食品を除いた“コア指数”でも同3.7%増に達した。季節調整値による前月比をみても、ともに0.3%上昇している。
実質賃金の落ち込みは、10月の確報ですでに2%台を示した。現金給与総額は同2.9%減、きまって支給する給与は同2.8%減となっている。本号がお手元に届く頃には、11月の速報を知って嘆息された後かもしれない。
新年号で今春の賃上げ予測をお願いした3氏からは、バラツキこそあるものの、いずれも定期昇給分を含めて2%台との予想が示された(=関連記事)。仮に大手の定昇分を1.8%程度とみなせば、ベースアップ分は高くても1%程度に留まる。実質的に賃金の減っている状態が、今後も続いてしまうことになる。
「物価上昇に負けない継続的な賃上げ」をめざす政府は、価格転嫁を促すために環境整備を進めてきた。中小企業庁は下請Gメンを倍増したし、公正取引委員会でも50人規模の増員を図る。サプライチェーン全体の共存共栄を謳う「パートナーシップ構築宣言」企業も、12月末現在で約1.8万社に上っている。
ただ、中小企業庁が昨年末に公表した「価格交渉促進月間フォローアップ調査」によれば、コスト上昇分に対する価格転嫁率は平均で46.9%に留まった(本号3面参照)。全体の2割で「全く転嫁できていない」としており、取引間のバラツキは大きい。同様の調査は昨年3月にも行われているが、結果にめだった変化はみられなかった。
比較対象をどうとるかにもよるが、消費者物価の伸びはすでに30~40年ぶりの高水準になっている。当時の民間主要企業の集計では、1万円台の平均妥結額は珍しくなく、賃上げ率も概ね5%前後で推移していた。
一方、昨年10月に日銀が示した「経済・物価情勢の展望」は、2023~24年度の消費者物価を前年比1%台半ばの伸びと予想する。少なくとも政府のお膳立てがあるうちに価格転嫁を実現し、継続的な賃上げを進めたい。