【主張】趣旨に適う裁量制運用を
労働政策審議会労働条件分科会は、専門業務型裁量労働制の対象業務拡大などを柱とする報告書をまとめた(関連記事=裁量労働制見直し 専門型も本人同意必要に 不利益取扱いは禁止 労政審労働条件分科会・報告)。
裁量労働制の効果として、自律的な働き方による生産性向上が期待される一方、業務の進め方や時間配分の裁量を持たない労働者に適用してしまうと、長時間労働による健康障害が発生する恐れもある。制度の導入・適用を検討する企業においては、「業務の遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある」といった制度趣旨を十分理解したうえで、運用するよう留意してほしい。
昨年8月から5カ月にわたった同分科会の議論では、使用者側が対象業務の拡大を要望し、労働者側が制度の適切な運用や健康・福祉確保措置の充実を求めていた。
分科会は検討結果として、専門型の対象に「銀行または証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案および助言をする業務」を加えるよう提言。専門型の適用に当たって労働者本人の同意を必須とするほか、対象労働者に求められる経験年数や保有資格などについて労使で協議するよう促していくとした。
報告書によると、適用労働者の裁量を確保するため、制度の位置付けを改めて明確化する方向だ。「始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度」であることを省令または告示などで示していく。さらに、時間配分の決定に関する裁量がなくなった場合には、労働時間のみなし効果が生じない点について留意するよう、企業に求めていくという。これらの取組みに併せ、企業における適切な運用が進み、生産性の向上につながることを期待したい。
長時間労働による健康障害を防止する観点からは、健康・福祉確保措置の新たなメニューとして追加される見込みの勤務間インターバル制度や、長時間労働者を制度対象から外す仕組みが効果的だろう。いずれも導入は義務付けられず、選択肢の1つに留まるが、企業においては、実態に応じて導入を検討してもらいたい。