【ひのみやぐら】原因把握し長時間労働削減へ
働き方改革や新型コロナウイルスの影響、それに伴いテレワークを行う人の増加など、ここ数年で働く人の意識が大きく変わってきた。過労死につながる長時間労働は削減へと大きく舵を切っているももの、簡単ではないのが現状だ。特に建設業、運送業は時間外労働の上限規制の猶予対象となっているが、適用となる2024年4月を前に「待ったなし」の状態で、業界挙げて対応に迫られているところだ。
建設業で残業が減らない原因として、第一に工期の問題がある。天気を相手にしている仕事である建設業は、天候の状態で作業が中止となった場合、スケジュールに遅れが生じやすい。加えて綿密な計画を立てても実際の施工となるとイレギュラーな事態が起こることがある。もともと厳しい工期のなか、不測の事態が起これば、結果的に対応に追われ残業が多くなる。
また、3K職場といわれることから、若者に敬遠され現場は常に人手不足だ。加えて高齢者が多く、良くも悪くも「仕事が優先」とする「昭和気質」が根強い。企業風土や文化は、人の性格のようなもので、なかなか変えられない。
運送業でも、人手不足の問題を抱えているが、特徴的なのは「手待ち時間」と「荷役時間」だ。「手待ち時間」はトラックが時間どおりに到着しても荷物の積み下ろしに待ち時間が発生することを指す。荷役作業は、取引関係のなかで決められるが、契約に定めのない作業が急に発生することがあり、ドライバーの労働時間を圧迫している原因になっている。
長時間労働の解消は重要だが、かけ声だけでは前には進まない。まずは、原因が何か実態を把握することが大切だ。労働者にヒヤリングを行うとともに、勤務時間を正確に把握する必要がある。原因を特定したうえで、具体的な業務改善を進めたい。ITツールなどで、可視化を図ると分かりやすいだろう。改革に当たっては、トップが決意表明を行い、企業風土を変えることに努める。さらに発注者、荷主に対して理解と協力を得る。
時間的に厳しいところもあるが、性根を据えて掛かるしかない。