【主張】賃金差公表の事例充実を
女性活躍推進法の省令が改正され、常用労働者300人超の事業主に「男女の賃金の差異」の公表が義務付けられてから半年が経過した。厚生労働省によると、「全労働者」「正規雇用」「非正規雇用」別に男女の平均年間賃金の差異(%)を示すだけでなく、「説明欄」を上手に活用して自社の実態をPRしている企業が出始めているという。
人材獲得競争が激しくなるなか、企業としては、平均年間賃金の差異の数値だけが一人歩きして、求職者から敬遠されてしまうような事態は避けたい。そのためには、説明欄を活用し、格差が生じている背景を明らかにしたり、課題解決に向けた取組みの方向性を併記したりして、自社の実情を正しく理解してもらえるよう工夫することが肝要だ。一方で厚労省には、公表時の参考になるよう、説明欄活用の好事例を取りまとめるとともに、企業への周知をお願いしたい。
公表義務化から半年が経過したことを受けて厚労省は、説明欄を活用している企業事例の一部を労働政策審議会の分科会に報告している。
たとえば、あるIT企業では、役職に着目した分析を実施した。正規労働者での差異が大きい要因として、女性の管理職比率の低さを指摘。管理職クラス、係長クラスといった同一クラス内での差異が小さいことに触れながら、女性管理職比率の向上を重点課題に位置付けて取り組んでいるとアピールしている。
建設コンサルタント業のケースでは、時系列で差異を明らかにしつつ、その背景も説明。前年は女性の賃金が上回っていたものの、新たに新卒女性を採用した結果、男性の賃金を下回ったとしている。
情報公表は、新事業年度の開始後おおむね3カ月以内に行わなければならないため、企業による初めての公表が出そろうのは今年10月ごろになる。厚労省は、そのころをめどに、301人以上企業の約1.8万社すべてに対して施行状況調査を実施する方針だ。「説明欄」の使い方の事例を取りまとめ、労政審に示していくという。詳細な分析に加え、企業への事例開示も早期に行うよう期待したい。