建築作業員の過労死認めず 最高気温34度の屋外作業で 伊丹労基署
夏季の屋外作業を負荷要因と認めず──兵庫・伊丹労働基準監督署が、兵庫県内の建築会社で屋外作業に従事していた労働者がくも膜下出血により死亡したのは、業務上によるものではないとして、遺族補償給付などを不支給処分としていたことが分かった。その後の審査請求、再審査請求も棄却済み。
労働者は平成30年8月8日、工事現場で作業中に倒れているところを発見され、9月21日に死亡している。労働保険審査会の裁決書によると、労働者の発症前1週間(8月1~7日)の現場周辺における最高気温は31.6~34.7度。発症日の8日は31.6度と、最も低い日と同じだった。
労働者の発症前2~6カ月の月平均時間外労働は最大73時間47分で、いわゆる過労死ラインには達していない。
再審査請求において遺族側は、屋外作業という厳しい暑熱環境を考慮した判断を求めた。これに対し同審査会は、「(発症前1週間に)最高気温が34度台の日もあるものの、夏季の屋外作業環境として一般的に想定される範囲のものであったと考えられるから、特筆すべき負荷要因があったとまでは認められない」とし、不支給処分を妥当とした。裁決は令和4年9月9日付。
遺族側は裁決を受けて、国を提訴した。作業環境について、気温に限らず、床にかがんで作業をしていたことによる輻射熱や、WBGT値(暑さ指数)を考慮して負荷と認め、不支給処分を取り消すよう求めている。
厚生労働省は3年9月に脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価することを明確化した。4年6月には京都下労基署が新基準を踏まえて、暑熱環境を負荷要因と認め、急性心不全で死亡した整備士を労災認定している=関連記事。
整備士の発症前2~6カ月の月平均時間外労働は最大77時間21分で、同じく過労死ラインには達していなかった。「50~60度の高温水スチームが噴射されるノズルを持って洗浄作業を行っていたこと」などを負荷として認めている。