【助成金の解説】キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)/岡 佳伸
障害者の雇用定着のために
キャリアアップ助成金障害者正社員化コースは障害者の雇用定着のために令和3年度に障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)を移管して作られました。今までの職場定着支援計画がキャリアアップ助成金と同じキャリアアップ計画に一本化されました。令和4年度の障害者以外のキャリアアップ助成金正社員化コースについて無期転換が廃止になりましたが、障害者正社員化コースは無期転換が残り使い易くなっています。
助成金の目的
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。「障害者正社員化コース」は正社員以外で雇用されている障害者従業員を正社員または期間の定めの無い雇用に転換(または採用)することによって、不安定雇用を解消することを目的しています。令和4年10月1日以降について支給要件が厳格になりました。
令和4年度改正点
① 令和4年10月1日以降に正社員転換等を行う場合は、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限ることとされました。よって、賞与も退職金も支給していない会社は対象外になります。
② 令和4年10月1日以降に転換等する場合は、転換後に試用期間が設けられている場合、正社員待遇の適用の有無に関わらず、正規雇用労働者に転換等したものとは見なされません。就業規則に「正社員採用後試用期間を3カ月設ける」等の規定がある場合は助成金の対象外になる可能性があります。
③ 令和4年10月1日以降、転換対象となる有期雇用労働者等については、賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6カ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者に変更になります。例えば契約社員と正規雇用労働者とで異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い、賞与、諸手当の違い)などが適用される必要があります。
④ 令和4年10月1日以降適用される雇用区分の就業規則等において契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者としてとりあつかわれます。
受給のポイント
① 対象となる障害者は、転換を行った日の時点で、次のいずれかに該当する労働者であることが必要となっています。(1)身体障害者(2)知的障害者(3)精神障害者(4)発達障害者(5)難病患者(6)脳の機能的損傷に基づく精神障害である高次脳機能障害であると診断された者
② 原則6カ月以上勤務している有期契約社員または派遣社員(派遣先として受け入れている者)を正社員登用または無期雇用労働者に転換後に、6カ月間雇用が定着した後に支給申請することができます。
③ 転換の際には試験(面接試験または筆記試験、両方の併用等)等で選考する必要があり、その転換に関する規程を就業規則等で定める必要があります。
④ あらかじめ、正社員で求人した者、正社員転換が予定されている者は対象外です。
⑤ 支給申請は正社員転換後(または無期雇用転換後)から6カ月間に係る給与が支給されてから2カ月以内に申請することになります。支給申請日までに退職している者は対象外ですが、本人の自己都合または懲戒解雇等で退職している場合は支給申請できます。
⑥ 転換後の給与を増額させる要件はありません。ただし、転換後に給与を減額させている場合は対象外となります。
⑦ 当該転換日の前日から起算して6カ月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合(退職勧奨を含む)により離職させた事業主は対象になりません。
⑧ 有期雇用労働者等から正規雇用労働者に転換または直接雇用される場合、当該転換日または直接雇用日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役等役員であったものは対象外となります。契約社員として雇用する前にフリーランス(請負等)で働いていた人を対象にすることはできません。
⑨ 特定求職者雇用開発助成金等他の常用雇用を目的とする助成金の対象になった者については、キャリアアップ助成金の対象とすることはできますが、支給申請区分として無期→正規の区分となります。
⑩ 障害者トライアル雇用助成金の対象者であっても、転換時点で有期契約の者については有期→正規の区分で併給が出来ます。
⑪ 社会保険加入の条件を満たす場合は転換後、社会保険加入して無ければ対象者にはできません。
⑫ 全てのキャリアアップ助成金に共通しますが、事前に「キャリアアップ計画」を作成して労働局に届け出る必要があります。