課題の可視化を実現 経営労務診断通じて/社会保険労務士長田事務所 代表 長田 里美
100年に1度のタイミングを狙ったわけではないが、2000年12月末に社労士事務所を退職、21世紀の幕開けと同時に開業したため、事務所を開設して今年で23年目を迎えたことになる。
開業の頃からお付き合いしている取引先の多くは、順調に事業規模を拡大し、新規雇用を増やしており、その成長を見守らせていただいていることが、この仕事を続けているうえで大きな励みになっている。
こうした取引先の中の1つに、創業間もない時期から、発展の過程をかたわらでみさせていただいている会社がある。この会社は労務コンプライアンスの意識が高く、いわゆるホワイトな企業であるにもかかわらず、ここ数年、採用に苦戦し、新たな企業PR方法を模索していた。取組みとして、「人を大切にする企業」であることを認証する社労士診断認証制度を案内したところ、同社は積極的に認証マークを取得した。そこで、認証制度について紹介したい。
社労士診断認証制度には3つの認証マークがある。「職場環境改善宣言企業」のマーク取得後、労務管理に関する調査項目、組織体制に関する確認項目、労務管理等に関する数値情報の3分野からなる経営労務診断を実施し、所定の経営労務診断基準の項目について社労士の確認を受けると、「経営労務診断実施企業」の認証マークが付与され、必須項目すべてが適正と認められると「経営労務診断適合企業」の認証マークが付与される。
認証を受けるメリットはリクルート面のアピールのほかにも諸々挙げられるが、経営労務診断を実施し得られる最大の効果は、企業の課題の見える化にあると考える。
前述の会社では、社内で意識されていなかった問題点が明らかになり、社労士の立場からは今まで知り得なかった労務管理上の改善点を見出すことができ、貴重な診断結果を得られることとなった。診断により明らかになった課題の解決は、採用難の解消に直結するものではなかったが、職場環境の改善は間違いなく社員の就労意欲の向上と、より魅力ある職場づくりへとつながるだろう。
経営労務診断は、会社の健康診断として、1年に1回実施していただくことが基本である。2回目の診断を前に、同社からは、診断項目の中では任意区分である職務分掌規程と職務権限規程の作成依頼を受け、組織体制の整備に着手している。「人」にかかる企業運営の相談指導を深めるべく、今後は多くの企業に積極的に経営労務診断の実施を働きかけていきたい。
社会保険労務士長田事務所 代表 長田 里美【千葉】
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