【ひのみやぐら】ポジティブ志向の14次防
厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が2月13日、加藤勝信厚生労働大臣に対し、第14次労働災害防止計画について答申を行った。国の定める総合的な労災防止計画である14次防が事実上、策定されたことを意味する。
14次防では取組みの実施率などを確認する「アウトプット指標」、期待される数値の目安を示した「アウトカム指標」という新しい考え方を導入している点が注目を集めているようだが、弊誌では公表されている計画(案)の重点対策に記載されている「事業者が安全衛生対策に自発的に取り組むための意識啓発の重要性」の項目に着目したい。引用すると「…事業者が自発的に安全衛生対策に取り組むことが、事業者にとって経営や人材確保・育成の観点からもプラスとなることを周知する等、事業者による安全衛生対策の促進と社会的に評価される環境の整備が必要である…」となっている。
従来、安全衛生対策は労働災害を起こした場合、事業者責任を問われかねないという経営上のリスク管理として捉えられてきた。マイナス要因を抱えて事業活動を行うことは困難となり、場合によっては企業生命が絶たれることから、リスク回避のために労働災害防止対策を行うという側面が強かった。
もちろん、労働災害を繰り返す事業者に対しては、罰則など厳正な対処が必要になるが、このたび策定された計画で、安全衛生活動を実利的なメリット面から捉える考え方も含めたという点は一目置く必要がある。
社会的に評価される環境の整備や労働災害を社会的問題として国民全体の意識を高めるというのは昨年、厚労省が立ち上げた「SAFEコンソーシアム」の流れを汲んでいる。すでに各都道府県労働局で「+Safe協議会」の設置が進んでおり、今後の活動が期待されるところだ。
元来、企業は利益を追求していく性質も持っている。安全衛生に取り組む事業者が優先的に選ばれる社会的状況が醸成されれば、目を向けないわけにはいかないだろう。
14次防は罰則やリスク回避のみではない、安全衛生対策をポジティブに捉える面がある。