【主張】就ハラ発生は高リスクに
今月から令和6年春の大学卒業予定者の採用に向けた広報活動がスタートし、これから企業における採用活動が本格化する。そんななかで気を付けたいのが、学生に対する「就活ハラスメント」だ。
2017~19年に就職活動やインターンシップを行った男女を対象に実施した厚労省の調査によると、就活などの間にセクハラを受けた経験がある割合は4人に1人に上る。ハラスメントの存在が公になれば、企業イメージは悪化し、採用活動に悪影響が及ぶ恐れもある。人手不足感が高まるなか、大企業だけでなく中小企業でも、未然防止策の実施が欠かせないだろう。
就活ハラスメントは、就職活動中やインターン中の学生などに対するセクハラやパワハラを指す。企業説明会や採用面接などでの性的な発言や身体への接触、食事への執拗な誘いのほか、他社への就職活動を終えるよう圧力をかけるオワハラ(就活終われハラスメント)などが該当する。
スマホを使って手軽にOB・OG訪問の日程を調整できる「OB訪問マッチングアプリ」の登場などを背景に、19年にはOB訪問の機会を悪用したわいせつ行為が、複数の大企業の社員によって行われたことが報道された。
たとえOB訪問を悪用したハラスメントを行ったのが、企業から採用活動への関与を認められていない社員だったとしても、企業には厳しい視線が注がれることになる。そういった事態を回避するには、OB訪問を受ける際の面談ルールを設定したり、会社の許可のない面談を禁止したりするといった対応が重要だ。厚労省が作成した就活ハラスメント防止対策事例集をみると、紹介されている大企業の多くは、OB・OG訪問などに対応する「リクルーター」の行動規範やマニュアル作成に取り組んでいる。
大企業に比べてOB訪問の機会が少ないとみられる中小企業では、とくに面接時の対応に注意したい。性的な発言はもちろん、就職差別につながる恐れがある質問をしないよう、面接を実施する担当者や経営者が、公正な採用選考に関するルールへの理解を深めておく必要があるだろう。