この場所からエール 幸せな働き手増やしたい/菱沼労務管理事務所 菱沼 生美
伯父が社会保険労務士事務所を開設してから50年近く経つ。伯父の亡き後は、母がバトンを受け継いだ。事務手続きを中心とした昔ながらの事務所が、目まぐるしく変化するこの世界で今日までやってこられたのは、多くの出会いとさまざまな巡り合わせのおかげである。
当事務所は、どの時代においても、丁寧に確実に仕事に取り組むことを信条としてきた。小さな積み重ねが今日を作る。そこには目を引くような派手さやキラキラ感はない。そんな昔ながらのスタイルを守る弊所であるが、時代の変化だろうか、最近は事務手続きに関する依頼と同じくらい相談に特化した依頼を受けることが多くなった。
労務管理上の困りごとから始まり、人材育成や人員配置の悩み、これからの会社の在り方などを経営陣と一緒に考えていくパートナーとしての役割を期待されることが増えてきたように思う。
相談内容は、すぐその場で解決できるようなものばかりでもなく、時には答えのない問いを経営者と一緒に考え抜かなければならないような場面もある。我われ社労士に求められることが変わってきていると感じる瞬間だ。
企業が抱える課題は一気に解決はしないし、人材も一気に成長はしない。会社も人も、ゆっくり少しずつしか変われないのだ。しかしいつかは大地に根を張り太い幹を持つ大きな木に成長したい。その思いを感じるたびに、支える側のこちらの手にも力がこもる。
振り返れば、長い間、社会保険労務士という職業を「窓」として労働の世界をみつめてきたような気がする。
その窓は、たとえば私が幼い頃には、暑い夏に汗を拭いながら重い鞄を手に顧問先を回る伯父であったり、寒い冬に夜更けまで文献を読み顧問先の課題を解決しようとしている母であったりした。
2人の社会保険労務士を通して見える世界は、幼心にも興味深く、そこで働く人々はとても魅力的であった。大きくなったら自分も良い働き手になりたいと思ったのは、仕事を通して力強く想いを実現していく大人の姿が身近にあったからである。また、社労士として仕事をしていこうと決めたのは、企業やそこで働く人々が一歩踏み出す場面において、誰よりも真っ先に背中を押してエールを送り続ける存在でありたいと考えたからである。
そしていま再確認することは、やはり私は「働く人が好きだ」ということだ。幸せな働き手がひとりでも多く増えるよう、この場所で力を尽くしていきたい。
菱沼労務管理事務所 菱沼 生美【福島】
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