【ひのみやぐら】行動心理をつく「見える化」
厚生労働省の「『見える』安全活動コンクール」が盛り上がっている。12回に及ぶ開催により、第三次産業にも浸透し、応募件数は増加傾向を見せているという。「見える化」については、オフィス機器メーカーのマックス㈱が、「安全表示・人づくりコンテスト」を催しており、製造業を中心に全国で賛同者が増えている(3月1日号特集2既報)。優れたアイデアを表彰するほか、入賞企業の交流会も開かれ、課題解決に向けた情報交換が行われた。
厚生労働省では、職場に潜む危険など視覚的に捉えられないものを可視化する「見える化」を推し進めており、産業現場でも有効な安全衛生活動として、取り入れる動きが活発だ。特に現場の危険がどこにあるか分からない新入社員や新規入場者、日本語の苦手な外国人、教育に時間を割くことが難しい未熟練のパートタイマーには効果が大きい。
令和4年度「『見える』安全活動コンクール」では1042件も応募件数があり、これまでで最多となった。厚労省では優良事例として80事例を選出し、表彰を行っている。今回は「ナッジ」を活用した見える化の事例を追加したのが特色といえる。「行動科学の知見に基づく工夫や仕組みによって、人々がより望ましい行動を自発的に選択するよう手助けをする方法」とナッジについて厚労省は説明しているが、要は人間の心理を利用して、相手に気付かれないうちに選択を誘導することを指す。
例えば、コンビニエンスストアのレジの前には床に足跡のマークが描かれている。客の列が縦と横で分かれることを防ぐのと同時に、最近では「密」を防ぐため前後の人との距離の目安として効果を発揮している。このように強制することなく、よい選択に誘導するのがナッジだ。
安全衛生分野でもナッジを活用することは非常に有効で、同コンクールの事例を見ると、工具保管箱に工具のシルエットを描き、自然と正しい箇所に工具を掛ける取組み(㈱西村組 第38西村号)などがホームページで見ることができる。
注意喚起だけではなく、見える化の役割が広がっている。