【主張】大枠は変わらぬ技能実習
果たして「抜本的な見直し」といえるだろうか。「技能実習制度および特定技能制度のあり方に関する有識者会議」の中間報告書のたたき台で示された、外国人労働者受入れに関する提言内容のことだ(=関連記事)。
たたき台では、現行の技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべきという。ただ、実習実施企業への適切な監理を行っていないとして処分を受ける監理団体が後を絶たないなか、「新制度」でも監理団体を維持する方向であるなど、制度の大枠は変わらないようにみえる。
技能実習制度は平成5年の創設当初より、安価な労働力を確保する手段として悪用されるケースがめだっていた。結果、低賃金労働や割増賃金不払いなど労働関係法令の違反や人権侵害が多発した。
そうした事情から同29年11月には、適正な制度運用に向けた技能実習法が施行。監理団体の許可制度が導入された。さらに、法令違反がなく、一定の要件を満たす優良な団体として「一般監理事業」の許可を得た団体については、入国後4年目以降も技能実習を実施できるようにした。
ただ、同法施行後も法令遵守状況が大きく改善したとはいえない。厚労省がまとめた令和3年における実習実施企業への監督指導結果では、違反事業場は実に73%に上る。とくに建設業や繊維・衣服業で割増賃金の不払いが多い。
監理団体は定期的に企業を監査し、法令遵守状況をチェックするよう義務付けられているが、監査を怠ったり、法令違反の事実を隠ぺいするなどして許可を取り消された団体は、今年3月までの累計で43団体に上る。優良団体として許可された団体も含まれており、監理団体制度が十分に機能しているとは言い難い。
提言では、企業による人権侵害行為を防止する観点などから、他社への転籍制限の緩和を打ち出したが、それだけで法違反はなくなるまい。優良団体として許可した団体でも取消しを受けている現状を考えると、監理団体制度を維持するのであれば、許可時の要件や、団体に対するチェック機能の大幅な強化・厳格化が必須だろう。