【ひのみやぐら】「コミュ力」が熱中症を防ぐ
熱中症のピークは7~8月だが、5月でも発生が報告されている。職長はじめ管理者は「まだ、大丈夫だろう」と油断することなく、警戒を強めていきたい。
熱中症の対策には、設備や健康管理教育、水、塩分の常備などが挙げられるが、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の実施要綱にもあるように、作業中は巡視を頻繁に行い、声をかけるなどして労働者の健康状態を確認していくことが求められる。このとき職長や管理者に必要となるのが、コミュニケーション力だ。
朝礼時の体調チェックだけではなく、休憩時や食事中などの機会に「いつもより動きが遅いけど、体は辛くないか」などと話しかけ、表情や言葉の抑揚などを確認する。コミュニケーションのなかで、体調のささいな変化を読み取ることが、熱中症予防につながるのだ。
上から目線で問い詰めたり、そっけない態度で体の具合いを聞いたところで、作業者から本音が返ってくることはない。体調不良にもかかわらず、休憩したいといい出せずにいれば、結果、熱中症になってしまうだろう。明らかに顔色が悪いのに、気にもかけないのは論外だ。
良好なコミュニケーションをつくり上げるには、日ごろからお互いの理解を深め合う必要がある。配下の作業員が安心して発言できたり、相談を持ちかけてくる職場の雰囲気づくりを心がけたい。
組織のなかで誰に何をいっても、拒絶や否定をされる心配がなく、安心して話すことができる状態を「心理的安全性」という。よいコミュニケーションを実現するため職長や管理者は、「心理的安全性」を意識しつつ職場環境を整える必要がある。「話をさえぎらず丁寧に聞く」「明るく元気な声で接する」「熱意と誠意を見せる」など自ら実践し、信頼関係を築いていきたい。
設備の充実だけが熱中症の予防対策ではない。一緒に作業する人たちとコミュニケーションを通して体調の変化などを敏感に感じ取り、臨機応変に作業内容の変更や配分など職場をコントロールするのも、熱中症を未然に防ぐ効果的な手段といえる。