【人材ビジネス交差点】「日本人と同等」とは/㈱インカレックス(特定技能登録支援機関) 代表取締役 古海 裕介
2019年に特定技能が新設されて以来、外国人にとっては日本で働くことが容易になったが、受け入れる日本の企業側の環境やマインドは全く変わっていないと感じることが多い。つまり、これまで外国人雇用をしたことがない企業にとっては、来日する側の事情について無知、無関心なことが多いのである。
外国人雇用に初めて取り組む企業の多くは、他の日本人従業員との不平等感が出てはいけない、経済的な負担も環境も日本人と同じでやってもらおうと考え、既存社員の異文化に対するマインド構築作業や、働きやすい環境の整備を行わずに臨むことが多い。その結果、外国人は早々に離職し、企業側も莫大なコストをかけただけで、社内全体には外国人雇用はもうこりごりという負の遺産のみとなるのだ。
もちろんルール上は、特定技能外国人に対する扱いは「日本人と同等」以上であれば問題ないのであるが、決して忘れてはならない観点が1つある。
特定技能での来日をめざす外国人の母国は平均月給2万~4万円と、我われの想像以上に貧しいということである。そして多くの日本企業が彼らに日本語能力を求め、彼らはその能力を習得するために毎日共同生活をしながら1年程度勉強してくるのだ。それは安くても数十万円のコストがかかっている。さらに、来日後に引っ越し費用や日本での生活費が「日本人と同等」にのしかかるのである。つまり彼らにとって給与面で同等ということは、もちろん大きなアドバンテージであるが、その他の面で日本人と同等ということ自体が莫大な負担となっていることが現実なのである。
想像してほしい。もし自分自身が日本語や英語以外の言葉で話さなければいけない物価が4倍以上の見知らぬ土地に3カ月後に赴任する、という辞令を会社から受けたらどうだろうか。現地の従業員と同じ待遇にするため、「家も飛行機も自己負担で」と言われたらどうだろうか。私ならば、正直に言うと辞退させていただくだろう。
これは、とても極端な例だが、特定技能外国人の雇用については、受け入れる日本企業がもう少し想像力を働かせ、彼らを理解しなければ成功はなく、この現状が続けば今後、外国人から選ばれる日本ではなくなるという危惧を感じざるを得ない。永続的に特定技能を発展させていくために、我われもこうした現実と向き合いながら単なる義務的支援を実施する機関ではなく、さらに企業側に寄り添ったサービスを提供できる外国人人材教育に特化した特定技能登録支援機関として活動をしていく。
筆者:㈱インカレックス(特定技能登録支援機関) 代表取締役 古海 裕介
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