働く現場は人生の舞台 目標持てる環境が重要/西村 美夕妃
社労士として、さまざまな背景を抱える人の声に耳を傾けるときに、必ず感じることがある。「働く現場は、人生の舞台である」。働くことは、人がどう生きるのかを考え選択してきた、人生の物語そのものではないだろうか。
社労士になる前の15年間に、アナウンサーとして2000人以上にインタビューする機会があった。著名人の言葉も、街行く人の声も、放送されれば誰かが受け止め、ときに反響が返ってくる。そして今、社労士として耳にする言葉は、誰かに届けるためのものではなく、その人の生き方を映し出すように、働くことで守っている人たちや暮らし、その人たちの信念に触れる。言葉の奥にあるものに近付きたいと思う気持ちは、アナウンサーの頃から、今も変わらない。
「うちの社員は部署ごとに動きがバラバラなんだよ」という社長の声を聴くこともある。インタビュアー魂に火が点く瞬間だ。言葉の意図や背景、そしてその根っこにある問題へと迫っていく。どんな現場でも、全員が光り輝くステージで注目を集めるわけではない。組織でも、スタジオでも、スポットライトの当たらない場所で、人知れず裏側を支える人が存在している。名もなき仕事に支えられていることはたくさんある。それぞれの立場で働く人たちが、お互いの存在と仕事を信頼するとき、強いチームワークが生まれる。そんな場面を目の当たりにすることも少なくなかった。そういうとき、それぞれが目標と自覚をもって働くことを見通せる環境があることが、大切な役割を果たしていた。
放送局ではアナウンサーを経て番組制作の責任者となり、制作の全工程を担う経験が得られた。その経験をもとに、今は自宅に小さなスタジオ設備を持ち、社労士として発信する動画の制作を行っている。毎回、構成を考えることから始め、原稿を書き、資料を集めて、撮影や編集へと移っていく。スマートフォン1つで動画を配信できるこの時代に、以前と変わらない工程を続けている根底にあるのは、社労士として現場で聴いた声や悩みに丁寧に応えたいという思いである。そのなかで、この作業や仕事に対する反応を感じるとき、私自身の働く喜びも照らされる。
働き方や働く意味が多様化するなか、その人らしい働き方を見通せる社会や、その生き方を照らし出すさまざまな道と舞台があればと願う。過去に培った経験を次のステップにつなげていく力と、何度でも未知の分野の1年生になれる柔らかさを大切に、社労士としての道を伸ばしていく。
ASSEMBLY国際社会保険労務士事務所 西村 美夕妃【愛知】
【webサイトはこちら】
https://www.assembly-sr.com/