【主張】複雑な改善基準に対応を
自動車運転者に対する時間外労働の上限規制と、新しい改善基準告示の適用が来年4月に迫るなか、厚生労働省は先ごろ、新告示のQ&Aを作成し、公表した(関連記事=集配運転者も対象に 改善基準の連続運転規制 厚労省Q&A)。
トラック運転者に関する告示では、拘束時間や休息期間、連続運転時間などの項目で例外的な扱いを盛り込んだほか、「予期し得ない事象」に対応した時間を拘束時間などから除外できる措置を新設するなど、従来よりも複雑になった。新告示を遵守し、運転者の健康障害の発生を防止するためにも、事業者においてはQ&Aを確認しておきたい。
新告示に盛り込まれた「予期し得ない事象」とは、乗務している車両の故障や、乗船予定のフェリーの欠航、災害・事故発生に伴う道路封鎖または渋滞など、運転中に遭遇するトラブルを指す。トラックの場合、これらの対応にかかった時間については、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から除くことができるようになる。
ただ、要件を満たさない場合には、1日の拘束時間の上限を超えた拘束などは行えないため、事業者は、予期し得ない事象の範囲を拡大して解釈しないよう注意が必要だ。
たとえば乗務している車両が故障した場合についてQ&Aでは、代わりに別の運転者が急きょ別の車両で駆け付けて運行するケースにおいて、別の運転者が駆け付ける時間などは拘束時間から除くことはできないとした。
また、運転直前の車両点検中にフェリーの欠航などが発生した場合も、運転中ではないため、その対応に要した時間は除外できない。
一方、予期し得ない事象に対応した時間は、1カ月の拘束時間からは除かれない。月の最終勤務日に車両故障などに遭遇した場合でも、その対応にかかった時間はカウントされることになる。そのためQ&Aでは、「拘束時間の上限を超えることがないよう、余裕を持った運行計画を毎月作成することが望ましい」と注意を促している。
Q&Aでは休息時間などの例外措置についての解釈も示した。昨年12月発出の通達とともに内容を把握し、複雑化した告示に対応してほしい。