【主張】職務給の法的課題解消?!

2023.05.25 【主張】
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 関西経済連合会は、職務給体系の導入で直面する根本的な課題に関し、政府に見解を求めた。このほど取りまとめた「政府の“三位一体の労働市場改革”に対する意見」のなかで、賃金減額を伴う異動や職務消滅による解雇について、政府としての考え方を明らかにすべきと述べている。

 職務=ポジションごとに賃金を設定する職務給体系では、異動により直ちに大幅な減給が起こり得る。他方で従来の判例では、定年までの雇用を前提として使用者に広範な人事権を認めてきた。結果として企業は降格・降職を行う場合も、賃金水準を概ね維持してきた経緯がある。

 関経連による会員企業へのヒアリング結果でも明らかなとおり、職務給体系を導入する企業の多くは、一時的に調整給を設けたり、減額幅を抑制する措置(=新しいポジションに見合う賃金まで下げない)を採用してきた。マネージャーの適性を否定し、降職させるようなケースであっても、自ら職務基準のポリシーを捻じ曲げ、不相応に処遇せざるを得ない。あるいは事業の撤退などで職務が消滅した際も、できる限り解雇を避け、まずは職務転換を模索する対応が求められてきた。

 抜擢・昇職には相応な賃金アップが求められる一方で、降職時の賃金ダウンを抑制するとしたら、人事の運用は矛盾を抱え込む。定額制のシングルレートを避け、ポジションごとの報酬に幅を設ける範囲給や洗替え方式を採用しても、根本的な解決にはなり得ない。人基準と仕事基準の折衷案である「役割」の概念が普及した背景には、意図的にその難点を避けてきた側面がある。関経連が政府に見解を求めた点は、日本企業が職務給体系を志向するうえでの積年の課題にほかならない。

 政府の新しい資本主義実現会議は5月16日、「三位一体の労働市場改革の指針」を決定した。皮肉なことに関経蓮の意見書が公表されたのはその前日であり、同指針で「政府としての考え方」を明らかにすべきと求めていた。

 法的な課題をクリアできるかどうかを明らかにしない限り、クライアントに当たる企業もその気にはならない。

令和5年5月29日第3402号2面 掲載
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