法的保護へ講習担う 入国直後の実習生を支援/霜野 彩子
私は月に1度、外国人技能実習生を対象とした法的保護講習の講師を務めている。
日本に入国した実習生は、会社に配属されるまでの1カ月間、研修センターに滞在する。そこでは、日本の生活に慣れるため、座学や自炊生活を通して、日本語のコミュニケーション、ゴミの分別や買い物の仕方、交通ルール、災害時対応などを学ぶ。カリキュラムには、入管法と労働法も含まれている。これが法的保護講習である。
実習生は配属前に必ず法的保護講習を受ける。出身国はベトナム、インドネシア、ミャンマー、モンゴル、中国、フィリピンが多い。講習では、それぞれ通訳がいて、私が話したあとで、通訳がそれぞれの言語で訳すということを繰り返す。
講習は朝9時に始まり、まず、受講は仕事であることを伝える。学校の授業とは違い、受講には給料が支払われる。そのため、仕事中にとってはいけない態度をとると注意される。無駄なおしゃべりはダメ。居眠りも禁止。とくに時間を守ることには厳しい。日本人は時間に遅れることを嫌う。たった1分遅れただけで給料を引かれたり、だらしなくて信用できないという目でみられたりすることがある点を伝える。
昼休みになると、出身国ごとにまとまって食事をとる。私もベトナムやインドネシアの実習生に混ぜてもらうことがある。日本で調達した食材を使いながら出身国で慣れ親しんだ料理を作る。実習生は買い物当番、料理当番と役割が決まっている。
昼休みが終わると、実習生は眠気との闘いが始まる。私が応援したくなるのは、眠気と格闘している実習生である。見回りをしつつ、睡魔と戦っている実習生のところに近付いていってみると、トタンにしゃきっと目が覚める。私は「やったね」と内心ガッツポーズをする。
午後は社会保険の話をする。仕事が原因でケガや病気をした時は、治療費を自分で払わなくても良いこと、働けない間もお金が出ることを伝える。このほか、健康保険証の使い方や、傷病手当金がどんな時にもらえるか、厚生年金はなぜ保険料が高いのか、帰国する場合は脱退一時金制度があることなどを伝える。
講習の合間には、日本の生活習慣についても触れることがある。日本では犬や猫を食べる習慣がないこと、日本の水道水は飲めるので、スーパーでミネラルウォーターを買う必要がないことも伝える。そんなホッと一息つけるような話題も取り入れながら1日の講習が終わる。
社会保険労務士霜野事務所 代表 霜野 彩子【東京】
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