真価問われる社労士 チャットGPT登場で/社会保険労務士法人大野事務所 代表社員 大野 実
最近、「働き方改革から働きがい改革へ」、「財務の視点から非財務の視点」、「人的資源から人的資本」といった言葉をよく耳にする。
まさに、人事・労務に関する相談業務や制度設計やルール作りを業務とし「ひとを大切にする企業の支援」、「ひとを大切にする社会の実現」をコーポレートメッセージとする社労士にとっては、わくわくする毎日である。
さらに、「チャットGPT」という人工知能(AI)の一種が2022年12月に一般公開されてから2カ月でユーザー数は1億人を突破したという。
それは、インターネット上のさまざまな情報を学習し、質問や指示に対して適切な答えや文章を生成する仕組みで、社労士のみならず他の士業やコンサルタントといったプロフェッショナルたちも一度試してみれば、本当に人と会話しているかのような精度に誰もが驚くだろう。
一方で、チャットGPTが普及すると社労士のような仕事はなくなってしまうのではという不安がよぎることにもなる。そこで、私が実際に試して感じたことを総括してみたい。
①課題の発見…そもそも課題自体をチャットGPTが発見することはできず、本来、プロフェッショナルである社労士が相談者と対面するなかで見出し得るものであること。
②状況判断…膨大なビッグデータ・文章を学習し、それを基に回答するため、平均的または一般的な答えしかできない。個々の会社の状況や案件ごとのさまざまな要素を踏まえて、あるべき共感や行動を導くための対応は、プロフェッショナルでなければできない。
③責任…バージョンアップを重ねて、より精度が高い回答になったとしても、回答に対する責任(文責)・担保は誰がするのかという問題に直面する。当然、活用する社労士が回答の責任を負うという自覚が必要となる。
私たち社労士は、まさにDXの時代潮流のなかで、プロフェッショナルとしての真価が問われるといえるのではないか。このように考えると、「チャットGPTが普及すると社労士の仕事はなくなるか」という質問に対し、実際にチャットGPTが回答した次の内容も、なるほどと思えてくる。
「チャットGPTは自然言語処理の分野で最先端の技術ですが、それが社労士の仕事を完全に置き換えることはありません。チャットGPTはあくまで情報提供やアドバイスの一助として利用されることが想定されています。社労士のように専門知識を持った人間としての判断力やアドバイスには及びません」
社会保険労務士法人大野事務所 代表社員 大野 実【東京】
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