【主張】労働法案成立でハズミを
平成27年通常国会が開幕した。労働関係の法律改正案や新法制定案が計5本程度上程される見込みだが、労使双方、社会全体に不要な混乱や停滞をもたらさないよう迅速・確実な審議と成立を強く要望する。是々非々で対応することは当然としても、労働法改正を政争の具にすることは許されない。
新法制定では、昨年の臨時国会で廃案となった女性活躍推進法案と若者雇用対策法案の上程を予定している。女性の活用も将来ある若者の雇用安定も早急に実現しなければならない社会的課題であり、そのための法的枠組みの整備が求められる。どの政治勢力も両法案に反対・逆行する議論は難しいと考えられ、審議日程さえ押さえれば成立は容易といえる。
問題は、労働者派遣法改正案と労働基準法改正案である。派遣法改正案は、やはり昨年の臨時国会で廃案となり、今回で再々上程となる。野党はこれまで「一生涯派遣法案」などと別称し対立法案と位置付けていた。しかし、派遣事業を全て許可制にする規制強化とともに、派遣労働者の処遇改善やキャリアアップを促進する仕組みを盛り込んでおり、全体としては必ずしも労働者に不利とはいえないものだ。不確定な状況をこれ以上続けてはならず、何としても今国会で成立を期すべきである。
労基法改正案は、日本版ホワイトカラー・エグゼンプションの創設が最も大きな対立軸となっている。対象労働者を年収1075万円以上とするなど、かなり絞ってきており、これを「残業代ゼロ法案」として反対するのは無理がある。将来的に年収基準が引き下げられる可能性があるにしても、400万円などとすることはどうみても考えにくい。法定外労働に対する割増賃金の支払いを大原則とする労基法の理念が根本から崩れるからだ。
厚労省では、医療保険関連の大きな法改正も予定していることから、厚生労働委員会において労基法改正案の審議日程をどこまで確保できるかは未知数だが、成立を急いで「成長戦略」の推進に勢いをつけることが重要である。