【主張】転換期に差掛る労働政策
本紙は従来から、わが国の経済社会の発展という「大局的な見地」から労働政策を企画立案しなければならない時代に入ったと主張してきた。労働政策審議会に対しても、その論議を労使の利害調整に狭めないよう求めてきた。
さきごろ経済同友会が発表した「『攻め』の労働政策へ5つの大転換を」と題する報告書(本紙平成26年12月22日号1面に既報)もほぼ同様の観点から厚生労働省への要望を表明しており、これを真摯に受け止めるべきである。
労働政策やそのバックグラウンドとなる労働法体系は、いうまでもなく「労働者保護」を中心的課題としてきたが、労働基準法や労働組合法が制定されて約70年が経過し、全体の社会経済水準が一定レベルに達した現在、そのあり方を修正していい時期に差し掛かっている。とくに、急速な人口減少と低成長時代を「労働者保護」の一辺倒で乗り切ろうとしても難しい。
同友会は、どの経済官庁も経済政策や産業政策の観点から労働政策を検討してこなかったという「空白地帯」が生起していると強調している。厚労省は「経済戦略官庁」として、雇用労働面から企業の生産性向上と持続的経済成長を実現させる努力が必要と指摘したのである。
わが国が抱える様ざまな課題を解決していくためには、労働政策や金融政策(金融・資本市場)、産業政策(製品・顧客市場)などが相互に整合性をとりながら、一つの目標に向かって連携し、一体的に推進していくことが不可欠となっている。
次期通常国会に提出しようとしている労働基準法改正案がいい例である。日本版ホワイトカラー・エグゼンプションや裁量労働制の適用拡大などが盛り込まれる見通しだが、いずれも「労働者保護」強化の狭い視野から導かれる発想ではない。生産性や経済社会全体の活性化を少しでも前に推し進めようとする狙いが込められている。
今後は、一方で「労働者保護」を堅持しながらも、社会経済全体を俯瞰する「大局的な見地」に立った労働政策の立案・運営を意欲的に推進していくことが大切である。