【主張】前年上回る賃上げ努力を
経団連の2015年版経営労働委員会報告がまとまった。春季労使交渉に向けた経営側の姿勢が明らかになる重要な報告書である。一方の連合もすでに賃上げ要求内容を決定しており、両者ががっぷり四つの状態となった。
経労委報告は、前年と比較して「賃金引上げ」に対する考え方がより積極化しており、個別企業はこれをバネに前年を上回る結果につなげてもらいたい。
前年の経労委報告の書きぶりでは、業績好調な企業に対し、収益の一部を「賃金の引上げに振り向けていくことを検討することになる」とし、やや消極的な姿勢も見え隠れしていた。それだけ先行き不透明感があったのだろう。
最新の経労委報告では、「経済の好循環の2巡目を回していくために…賃金の引上げを前向きに検討することが強く期待される」とし、さらにこうした企業行動が連鎖することで経済拡大への「大きな力が生まれる」とした。
明らかに賃上げに対する方針が変化している。この2年間続いたアベノミクスに一定の成果がみられるのは明確であり、産業界にもそれなりの自信と確信が芽生えた。前年のような先行き不透明感は影を潜めつつある。
問題は、実際の賃上げがどこまで達成できるかだ。本紙が賃金問題の解説をお願いしている2人の賃金コンサルタントの予測では、定昇込みで2%台前半から半ばとしている。今後の日本経済の成長を考えた場合、やはり少なくとも2%台半ばを上回る賃上げ率が望まれる。
日銀による来年度の消費者物価指数の予測では、原油価格の予想外の下落を受け1%(生鮮食品と消費税増税の影響を除く)に留めたが、来年度のある時点では安定的に2%に引き上げることが可能としている。そのため、再度の金融緩和も検討しているとの見方があり、一定のパワーを持った賃上げが不可欠だ。
政府は、2017年4月からの消費税再増税に不退転の決意で臨んでいる。実現できなければ、日本経済は再び転落の淵に立たされる。15年春季賃上げ交渉がカギを握っている。