【主張】雇用関係の不正受給摘発強化を
2008年秋のリーマン・ショック後に拡充された雇用調整助成金の不正受給額は、今年度までに100億円を超えることが、主管の厚生労働省調べによって明らかにされた。助成金は、「中小企業緊急雇用安定助成金」と大企業向けの雇用調整助成金の2つがある。不正受給は、スタート当時から発生し、うち前者が圧倒的に多いという。
不正受給額および受給企業の推移をみると、09年度約7億7000万円(91件)、10年度約37億1000万円(355件)、11年度約51億7000万円(295件)。12年度分は、年度末を前にすでに前年度並みの不正額となる見込みと同省ではみている。
ところで、安倍首相はデフレ脱却対策の重要な柱として「雇用」を掲げ、政策的には雇用調整助成金の拡充を図るもよう。結構な施策であることは確かだが、10年度と11年度を見ていただきたい。後者の件数は、前年度に比べ60件減っているものの、額は逆に14億6000万円も増加している。単純にみると、不正受給が大型化かつ悪質化していることになろう。
厚生労働省でも当初から不正受給に警告を発し、現在のところ4つのペナルティーを明らかにしている。①不正発生日を含む判定基礎期間以降に受けた助成金は全額返還とし、かつ助成額の最大3倍を徴収する②一度の不正でもハローワークで扱うほぼすべての助成停止③事業主・事業所名の公表④とくに悪質な場合は、詐欺罪として刑事告発する、がそれだが、地検特捜官や税務調査官に匹敵するような調査官を配置するなど、もっと強力な摘発方法を考慮すべきだろう。伊丹十三監督の「マルサの女」並みにしつこくやってもらいたい。
読売新聞1月13日付1面サイドでは、09年10月から始まった国の「総合支援資金貸付制度」が昨年3月の返済期限時点で6割が「未返済」だと報じられている。未就職状態だから、返済不可能というのが「いい訳」だ。同列には論じられないが、当局(厚労省)は舐められているのではなかろうか。回収努力を真摯に行っているのか、首を傾げざるを得ない。