【主張】標準的な運賃は延長必至
来年4月の時間外労働の上限規制、改正改善基準告示の適用を控え、トラックドライバーの「標準的な運賃」を巡る動きが慌ただしくなってきた。国土交通省は活用状況に関する調査結果を公表し、事業者の69%が運賃改定に向けた交渉を行っており、時限措置である制度の延長を望む声も76%に及んでいると明らかにした。自民党内でも延長に向けた法案提出の準備が進んでいる。
同制度は、2024年問題に向けてドライバーの労働条件を緊急に改善する必要があるとして、国土交通大臣が標準的な運賃を定め、告示できるとしたもの。19年施行の改正貨物自動車運送事業法により、24年3月末までの時限措置として導入された。まずは事業者が標準的な運賃を基に自社の運賃を計算し、荷主と交渉したうえ、地方運輸局に事後の届出を行う――。そうしたプロセスを踏み、各社が自ら適正取引や賃上げを実現することを期待している。
実際に標準的な運賃が告示されたのは、コロナ禍真っ只中の20年4月。地方運輸局別の「距離制運賃表」で距離や車種に応じた金額が定められ、深夜・早朝運送時の割増率や、荷待ちなどに伴う待機時間料も示された。国交省では適正な原価に適正な利潤を加えて設定したとしており、原価に含まれる人件費は、全産業平均の賃金=時間当たり単価を基に算出している。
ドライバーの給与体系は、仕事量や時間外労働に連動する給与の比率が極めて高い。たとえば全日本トラック協会の調査では、男性大型運転者の1カ月平均賃金36.9万円のうち、歩合給などの変動給の割合は52.2%を占める。単純に労働時間のみ減らされると、大幅に減収となるドライバーが続出しかねない。
現在の輸送能力を維持するには、働き手の維持・増加が求められる。実質的に残業代を組み込む給与体系を改め、速やかに時間単価を引き上げる必要がある。国が“標準価格”を示す是非はさておき、同制度はそのための指標と機会を提供し得る。新たな労働時間規制を徹底するためにも、タイムリミットを超えて浸透を期すのは必然だろう。